人間尊重、人材育成、多様性の推進

人材開発/多様性の推進

人材戦略の基本方針

人的資本投資

図:人的資本投資。重点テーマ:専門性の深耕を促進 など。関連する重点的な施策:OJTを基本とする人材育成のサイクル など。関連指標:勤続年数 など。

信越化学籍社員を対象としています。

当社は業界の中で最も高い生産性を達成し、さらに向上することを目指しています。そのため「従業員1人当たり営業利益」を重要な指標とし、高い生産性を実現する「T字型人材」の育成に注力しています。「T字型人材」とは、ある業務や領域の専門家であるとともに、その他の分野でも活躍できる幅広い仕事力を有する人材です。

当社ではT字型人材を育成するためにOJT(On the Job Training)を基軸としています。従業員の適性と職業人として目指す姿を尊重した人材の配置を行い、一人一人が担当する仕事で真の専門家になることを支援しています。そのため、当社では画一的な人事異動、いわゆる定期的な配置転換は実施していません。担当している業務を深耕することで、高い水準の仕事力を有する従業員の育成に注力しています。

当社グループの取引先は世界に広がり、現在の連結売上の約8割は海外売上です。そのため、世界で活躍する人材の育成に予てから取り組んでいます。若い社員に海外勤務を経験させるとともに、日本に勤務する従業員も海外の取引先との実務を通じて、国際性を身に付けています。

当社では、OJTに加えて成長の段階に応じたさまざまな研修プログラムを提供し、従業員が専門分野に加えて、知識と技能の幅を拡げることを支援しています。研修プログラムは、英語をはじめとした国際化研修、マネジメント研修、AI人材の育成研修など多岐にわたります。

当社の成果主義による人事制度では、従業員は期の初めに意欲的な業務目標と改善目標を定め、その目標に挑戦することで成長を促しています。部下が目標を達成するために、上司は助言と指導を行っています。期末には目標に対する達成度を評価するとともに、能力、成長の可能性、仕事に取り組む姿勢も考慮し、従業員の意欲を高め成長につながる取り組みをしています。このように、OJTを基軸として、実績と能力を重視する人事制度により人材配置、研修、登用、評価を行い、「T字型人材」の育成を進めていきます。

人材育成に加えて、ライフワークバランスを尊重した柔軟な働き方ができる事も人材の育成に必須と捉えています。結婚、出産、育児、病気の治療、介護など人生の中で起こるさまざまな事柄に柔軟に対処できる制度を用意しています。これらの会社の取り組みは、従業員による会社への帰属意識を高め、従業員が自発的に会社の成長に貢献したいという意欲の向上につながっています。

海外のグループ会社でもここで述べた人材育成の考え方を基軸として、各国の制度、慣習、人材と文化の多様性を尊重した取り組みが行われています。

このように、「従業員1人当たり営業利益」を高め続けることを会社の重要な目標と定め、心の通った人材育成を推進しています。その結果、近年の営業利益の増加率は従業員数の増加率を大きく上回り、従業員1人当たりの生産性の大幅な向上につながっています。

教育・研修、自己啓発

信越化学グループでは、さまざまな研修制度によって従業員の成長を支援しています。研修制度には、階層別研修、国際化対応研修、聴講生制度、環境教育、安全教育、メンタルヘルス教育、AI研修などがあります。

階層別研修

階層ごとに求められる、業績向上に必要不可欠なマネジメント力、リーダーシップ、コミュニケーション力、課題解決力などを学ぶため、階層別研修を行っています。

  • 部長層研修(アドバンストマネジメント研修、S職群・M職群研修)
  • 課長層研修(ミドルマネジメント研修)
  • 係長層研修(ラインマネジメント研修、スタッフマネジメント研修)
  • 一般社員研修(中堅層研修、女性社員研修、ジュニアリーダー研修、入社3年目研修)

国際化対応研修

当社グループの事業活動は世界各地に広がっており、円滑な業務遂行のためには外国語でのコミュニケーション能力が必要不可欠となっています。そこで、当社では、以下のような研修を行っています。

  • 英語研修(ミーティングスキルコース、プレゼンテーションスキルコース)
  • 異文化間コミュニケーション研修
  • 中国語会話教室

AI研修

AIを使いこなせる人材を発掘、育成し、社内全体のレベルアップを図るために、以下のようなAI研修を会社が費用を負担して行っています。2023年度は226名、2021年度からの3年間で延べ766名の従業員が受講しました。

  • AIリテラシー習得研修:新入社員、若手社員を対象にしたeラーニング
  • データ解析スキル習得研修:中堅社員を対象に課題解決型学習により実務課題解決を行う
  • AIプロジェクトマネジメント研修:プロジェクトに係る部課長を対象にしたeラーニング

聴講生制度

信越化学は、1962年に聴講生制度を設けました。現場力の向上を目的として、当社グループの生産現場のオペレーターなどを毎年数名から10名程度を選抜し、1年間大学で学ぶ制度です。発足以来60年間で延べ547名の従業員が同制度を修了し、各現場のリーダーとして活躍しています。

研修制度一覧

図:研修制度一覧。階層別研修、専門教育、AI・MI教育、環境・安全教育、品質管理教育、特別教育、一般教育。

※1Material Informatics

※2Problem-based Learning

能力成果主義による人事考課制度

当社グループでは、従業員の能力や仕事での成果を重視した人事制度を導入しています。高い目標に向かって挑戦することを評価し、その成果と姿勢を処遇に反映することで、従業員の意欲向上につなげています。人事制度を公正かつ適切に運用するために、人事考課を行う全ての管理職を対象とした考課者訓練を実施し、公平な評価ができるように取り組んでいます。また、評価基準を従業員に周知することで透明性を高めています。さらに、上司と部下との面談制度を設けて、両者の意思の疎通を図っています。面談では「コミュニケーションシート」を活用し、課題をお互いに確認し合いながら半年間の目標を設定、その成果のフィードバックを行い、さらなる能力開発を進めています。

関連情報

当社は、2023年4月に「マルチステークホルダー方針」を公表しました。

多様性の推進

日本では少子高齢化が進み、生産年齢人口は年々減少しています。企業活動を維持するためには、年齢や性別を問わず、多様な人材の活用が不可欠になっています。また、当社グループにおいてはグローバルな事業領域の拡大、業務の多様化、デジタル技術の革新などを背景に、さまざまな国籍やバックグラウンドを持つ人材が活躍しています。人間尊重を最優先とする当社グループでは、社員の性別、国籍、障がいの有無、年齢にかかわらず、多様な人材が、それぞれの能力を最大限発揮して、貢献できる職場づくりを目指しています。

当社グループの多様な人材が挑戦する姿は、従業員インタビュー「Shin-Etsu Challengers」をご覧ください。

女性の活躍推進

当社グループは女性の活躍を推進するため2016年度から5年間の目標を掲げて取り組み、2021年度から、新たな5年間の目標を設定し、取り組みを開始しました。

女性の活躍推進のための2021年度からの5年間の目標

  1. 採用時の女性比率を事務系40%、技術系10%とする。
  2. 係長を含む女性の管理職者の数を2014年度比で4倍にする。
女性管理職比率(課長級以上)
2022年度 2023年度
連結 12.6% 12.7%
信越化学 1.7% 2.0%

女性活躍推進法に基づく行動計画における2021年度からの5年間の目標と進捗

図:採用時の女性比率。事務系:2024年4月33.3%。2025年度目標40%、技術系:2024年4月9.9%。2025年度目標10%。
図:係長級を含む女性の管理職者数。2014年度比。2024年3.47倍。2025年度目標4倍。

対象: 信越化学の従業員と出向者

女性活躍推進のための取り組み

  1. 育児と仕事の両立支援に向けた環境整備の推進
    • 両立支援のための情報提供の充実
    • 継続就業に資する施策の継続と拡充
  2. 女性管理職登用に向けた公正な人事評価制度運用の推進
    • 考課者訓練の定期開催による制度理解の浸透推進
  3. 社員の意識改革を促す学びの機会の提供
    • 研修を企画開催し、女性活躍に対する社員の意識改革を進める
TOPIC

第1回女性社員ラウンドテーブルを開催

2024年3月に信越化学本社にて、女性社員の活躍推進の取り組みの一環として、第1回女性社員ラウンドテーブルを開催しました。冒頭に社長の斉藤が本件に関する考えを述べ、メンターとして当社の社外役員である長谷川取締役、加々美監査役、金子監査役が、そして当社グループの19人の女性社員が参加しました。メンター3人による経験談の共有や当社グループへの期待についての話があり、参加者同士で職場と仕事に関する意見交換が活発に行われ、部門を超えて女性社員同士のつながりができる場となりました。

第1回女性社員ラウンドテーブル
(2024年3月 信越化学本社)

障がい者が働きやすい職場づくり

障がいの有無にかかわらず、活躍することができる職場づくりを進めています。本社では障がいの程度や状況に応じた就業時間や就業場所の設定などフレキシブルに対応し、雇用機会の最大化を図っています。工場では、障がいがある場合にも安全かつ安心して就業していただけるように、施設設備面などハード面と防災訓練などを含むソフト面の両面から環境整備を進めています。

障がい者雇用率

図:障がい者雇用率。2024年3月2.42%。法定雇用率2.30%

車椅子用のスロープ(信越化学 群馬)

年齢にかかわりなく活躍できる環境づくり

当社は信越化学労働組合と協議を重ね、2019年4⽉から大手の化学業界では初めて、定年年齢を60歳から65歳に引き上げました。60歳以降は、59歳時点の給与の80%が支給されます。また、人事評価に基づいた昇給や昇格も実施されます。60歳以降の雇用環境を整えることで、製造現場の熟練者が技術や経験を生かし、次世代に受け継いでいくことが可能になります。

「人材開発/多様性の推進」での信越化学グループの対象は、信越化学の従業員と出向者です。

シムコア オペレーションズ社(オーストラリア)の取り組み

サプライチェーン上の人権状況をモニタリング

シムコア オペレーションズ社は、人事部の取り組みとして、人権尊重、人材育成、働きやすい環境の整備に注力しています。人権尊重に関しては、オーストラリアの現代奴隷法に基づき、サプライチェーンで奴隷的な労働がないかを継続的にモニターし、その結果を管轄当局に報告しています。そして、劣悪な労働条件で搾取(さくしゅ)しているサプライヤーとは取引しないようにしています。また、男女の賃金格差などジェンダー平等の問題にも取り組んでいます。職場男女平等庁(WGEA)に年次報告書を提出しているほか、人権尊重やジェンダー平等について他の企業やオーストラリア政府とのワーキンググループに参加し、外部の事例などを社内で共有しています。

人材育成では、役職別の研修や設備の安全操業教育などを充実させ、働きやすさに関しては、ワークライフバランスのための制度を拡充しています。さらに、「人権に関する救済方針」や「チームビルディング活動方針」、人材流出防止のための「リテンション方針」なども定め、全ての従業員を公正かつ公平に扱うことを保証しています。

関連データ

項目 内訳 対象範囲 単位 2021年度 2022年度 2023年度
従業員の状況 地域別従業員数 日本 9,101 9,401 9,718
アジア・オセアニア 10,617 10,935 10,736
中南米 0 0 0
米国 3,638 3,745 3,887
欧州 1,598 1,636 1,663
連結 24,954 25,717 26,004
従業員数(男性) 連結 17,434 18,120 18,461
国内 8,100 8,345 8,583
海外 9,334 9,775 9,878
従業員数(女性) 連結 7,520 7,597 7,543
国内 1,001 1,056 1,135
海外 6,519 6,541 6,408
離職率 信越化学 1.3 1.4 1.2
連結 18.4 15.0 12.7
離職率(自己都合のみ) 信越化学 1.1 1.2 1.0
連結 17.2 13.8 11.0
多様性 障がい者雇用率 信越化学 2.27 2.35 2.42
課長級以上の女性管理職の人数 信越化学 19 19 23
連結 538 576 557
課長級以上の管理職に占める
女性比率
信越化学 1.7 1.7 2.0
連結 11.1 12.6 12.7