社長メッセージ

社長メッセージ

事業成長と社会課題解決の両立を図り持続的な企業価値向上を目指します

信越化学工業株式会社
代表取締役社長 斉藤 恭彦

サステナビリティのマテリアリティ(重要課題)は、当社グループの財務諸表への影響と、事業活動が環境や社会に与える影響の両面から捉えることができます。ここ数年、経済的なリターンだけでなく、投資を通じてより良い社会を実現することを宣言する機関投資家が増え、こうしたダブルマテリアリティの考え方が急速に浸透しています。この2つの側面は二項対立のように言われることもありますが、当社が定めた重要課題に対する取り組みは、中長期的な企業価値向上にポジティブな影響をもたらしています。

カーボンニュートラルへの取り組み

当社は2023年5月に2050年までに温室効果ガス排出量(スコープ1、スコープ2)を実質ゼロとするカーボンニュートラルを達成するための計画を発表しました。 この計画の中軸を担うのは当社が 綿々と取り組んできた生産における原単位の削減、製造プロセスから発生する熱の回収能力の向上、そしてエネルギー効率を高めることです。過去 30 年間で、当社は温室効果ガス排出量の生産量原単位を1990 年比で半減しています。一方、当社は生産能力を拡大し続けながら事業を成長させています。その過程でエネルギー消費の絶対量は増加します。原料とエネルギーを使って生産を行う素材メーカーにとり、カーボンニュートラルの達成は大きな挑戦です。しかしながら、当社は生産性の向上と省エネルギーを止むことなく追及していきます。例えば、当社の製造には燃焼やクラッキングを要するものがあります。導入を検討すべき実用化が期待される先端技術や新たな試みが生まれてきており、これらを選択肢として計画に取り入れます。リサイクルも重要な役割を果たすもので、顧客や業界とともに推進していきます。使用するエネルギー(大部分が電気)について、幅広い調達の選択肢を検討し、供給先との協議を進めています。さらに、当社は燃料を天然ガスから水素に転換する経済的にも可能な技術を検討しています。太陽光発電、二酸化炭素回収・貯留プロジェクトについても評価を進めています。これらの対策はコスト競争力を犠牲にせずに実施しなければなりません。コスト競争力を維持し、同時に客先の要請にお応えしながら、カーボンニュートラルを実現するために革新的であり続け、活用できるものは全て取り入れてまいります。

当社の日本国内生産拠点で運用している天然ガスコージェネレーションシステムは「コージェネ大賞 2023」で最高位の賞を受賞しました。水力発電の地産地消型PPAにも参加しています。 一方、当社グループの製品の多くは、温室効果ガス排出量の削減に寄与し、エネルギー効率の向上と環境への負荷低減に貢献しています。日本政府はカーボンニュートラルにとって不可欠な14分野を挙げていますが、当社グループの製品の売上高の約7割がこの分野に向けたものです。 対象となる分野には、住宅やインフラ、電気自動車、DX、GXなどが含まれます。

「Power Purchase Agreement」の略。電力使用者が発電事業者から一定期間、単価を固定して電力を購入する契約形態

写真:斉藤 恭彦

人的資本とダイバーシティ

働く人のプロの職業人としての能力を高め強化するために、私たちはさまざまな方法による人財への投資を行っています。ダイバーシティ推進の一環として、女性の独立社外取締役・監査役と女性社員による座談会を開催しました。 その目的は、女性の活躍と仕事に関する意見交換を促進することです。 日本の人口動態より、昨今のダイバーシティは、女性活用という働き手(量)の話になりがちですが、私はむしろ多様な発想(質)が企業価値につながることを期待しています。

サプライチェーン全体の人権尊重

当社は責任あるサプライチェーンを構築するために、サプライヤーに「信越化学グループ人権方針」、「調達基本方針」、「CSR調達ガイドライン」をご理解いただくことに注力しています。 その中で、差別を排除し、国際労働機関の労働基準を守り、不当な労働行為をさせないことに取り組んでいます。

また、全ての調達品から紛争や人権侵害などへの関与が明らかな鉱物を排除することも積極的に行っています。

写真:斉藤 恭彦

働く人の安全の確保

従業員の安全は当社が事業を行う上での大前提です。現場でのゼロ災害を達成するために、潜在的な小さなミスや事故を排除する基本的なことを行っています。 そのために、決められた規則や手順を必ず守り、危機に対する感性を高め、リスクを速やかに排除するという3つの行動指針を徹底しています。

ガバナンスとリスクマネジメント

取締役会は企業統治の中核です。 取締役会は取締役9名で構成され、うち5名は独立社外取締役(うち、米国人1名、女性1名)です。 また、当社には監査役会があります。監査役4名のうち3名は独立監査役(うち、女性2名)となっております。皆さまには、株主還元、投資、サステナビリティなどをはじめ当社の重要案件について審議に参加していただき、提言や指摘をいただいています。

また、世界情勢や経済の不確実性を考えると、リスク管理は非常に重要です。 当社では、設備投資や原材料調達においてカントリーリスク等の評価を重視しております。

さらに情報セキュリティを強化し、サイバー攻撃や情報漏えいへの対策にも鋭意取り組んでおります。

Shin-Etsu Everywhere

当社グループは「Shin-Etsu Everywhere」というスローガンを掲げています。これは、当社グループが世界中の人々の暮らしと産業を支えるエッセンシャルサプライヤーであり、当社グループの製品や技術が用いられるほど、環境や社会のサステナビリティに貢献することを意味しています。その責務をしっかりと自覚し、今後も社会とともに持続可能な成長を目指します。

2024年6月
代表取締役社長 斉藤 恭彦

写真:斉藤 恭彦