経営方針

アニュアルレポート2020より

会長メッセージ

代表取締役会長 金川 千尋
代表取締役会長
金川 千尋

当社グループが培ってきた力により
さらなる企業価値の向上に
取り組んでまいります。

 

 

 

 

 

信越化学グループの製品をご愛顧いただいているお客さま、株主、お取引先、地域社会の皆さまからのご支援とご協力に心より感謝申し上げます。

 

2019年度は世界経済が減速する厳しい環境でしたが、当社グループでは引き続き経営努力を重ねることで最高益を更新することができました。

 

当社の塩ビ事業を担うシンテックでは、2020年2月にエチレン工場が完成し、稼働を始めました。これによりシンテックは原料からの一貫生産をさらに強固にすることができました。今後も世界最大の塩ビ供給事業者として、お客さまの元に製品をより安定的に供給する基盤を拡充してまいります。

 

同社は、1974年10月にテキサス州フリーポートで操業を開始し、世界の塩ビ需要を着実に捉えて、同地での大型増設を繰り返しながら成長してまいりました。1997年にフリーポートでの一連の増設が完了したことで、新たな生産拠点が必要との決断に至りました。これは、生産拠点を分散することで、自然災害等のやむを得ない事由が発生した場合もお客さまへの供給責任を着実に果たしていくための決断でした。 第一段階として、2000年12月にルイジアナ州のアディスで塩ビの生産を開始しました。その後、シンテックでは一層の成長を目指して原料からの一貫生産計画に取り組みました。塩ビの原料からの一貫生産を行うためには広大な土地が必要です。米国内の複数の候補地を調査した結果、ルイジアナ州のプラックミンに、鉄道と船舶の両面で輸送に最適な工業用地を見いだし、同地で2008年7月から、塩ビの主原料の一つであります塩素からの一貫生産を始めました。その後、プラックミンでは2度の大増設を実施し、現在のシンテックの生産能力は295万トンに達しました。 そして今年2月、もう一つの塩ビの主原料でありますエチレン工場が生産を開始したことで、シンテックの原料からの一貫生産計画が完了しました。もちろんシンテックの歩みは、これで終わりではありません。現在、さらなる発展に向けて今年末の完成を目指して大増設を進めています。

 

現在、世界経済は新型コロナウイルス感染症の拡大により、深刻な影響を受けています。 これは2008年の世界的な金融危機を超える危機とも言われています。当社の歴史を振り返りますと、過去に何度となく訪れた危機に際しても、経営力により克服し、さらなる成長に結び付けてきました。それを可能にしているのが、私たちが培ってきました次に述べます当社の強みです。

 

● 一つの製品、特定の顧客に過度に依存することなく、主力事業である塩ビ、半導体、シリコーンをはじめ、各事業を強くすることに注力しています。
● 強固な財務基盤を築くことで、自己資金による機動的な設備投資や研究開発投資を行っています。
● 絶え間のない技術革新と生産性の向上により、不況に強い企業体質を築いています。
● 経営者と従業員が一体となり、持続的な成長に取り組んでいます。

 

今後も引き続き企業価値の向上に取り組んでまいります。皆さまにはなお一層のご理解とご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

 

代表取締役会長 金川 千尋
代表取締役会長 金川 千尋

 

 

社長メッセージ

代表取締役社長 斉藤恭彦
代表取締役社長
斉藤 恭彦

安全と品質を最優先に高稼働を続け、
過去最高水準の利益を達成いたしました。
今後もより堅実で強固な企業体質を育み、
お客さまにより良い価値を
提供してまいります。

 

 

 

皆さまにこのメッセージを執筆している今この時、世界は現世代で最も深刻な健康への脅威の一つに直面しています。それにより世界経済や私たちの生活は多大な影響を被っています。新型コロナウイルスの世界的な蔓延により深刻な被害にあわれている皆さまと地域社会に、心よりお見舞い申し上げます。

 

私は、世界各地で活躍する2万3千人の当社の従業員を誇りに思っていることを、皆さまにお伝えしたいと思います。当社グループで働く全員が、この非常時の中で、職場の安全を保ちながら設備の稼働を継続し、お客さまへの供給を果たすために、すばらしい仕事を積み重ねています。しっかりとした目的意識のもとでの精勤に、感謝の念が尽きません。グループで働く人たちの綿密さ、集中力、そしてチームワークは類まれなものといえるでしょう。申すまでもなく、当社は従業員の健康と安全を最優先しています。また、当社執行部の皆さんの優れた指導力にも心より感謝の意を表します。

 

2019年度は当社にとって再び輝かしい事業年度となりました。経営努力によって過去最高の利益の更新を継続することができました。現在の状況を見渡していただければ、2019年度の化学そして素材産業の中で、減益とならなかったことが稀有なこととご理解いただけると思います。投下資本利益率(ROIC)と自己資本利益率(ROE)は、それぞれ19.4%と12.3%を維持しました。2010年3月期以降の累積成長額は税引後利益で2,302億円、年平均成長率は14.1%です。これらの実績とこれまでに積み上げてきた成果により、今まさに直面している極めて難しい局面におきましても、当社は強い力をもって対処することができます。2019年度には2,650億円の設備投資を行いました。2020年度も2,400億円の設備投資を行う予定で、生産能力の増強に加えて業界での優位性を高めることを目指します。これらの投資は、優先順位を考慮し統制を取りながら実施してまいります。当社はこれまでも目標を明確に定め、事業の基本を尊重し、さまざまな問題に対処してきました。今後とも献身的に働く従業員と共に、堅実で強固な企業体質を育み、お客さまにより良い価値を提供し、技術革新を図り、株主の皆さまへの還元を進めてまいります。

 

塩ビ・化成品事業では、はじめにシンテックのエチレン工場が操業を開始しましたことをご報告いたします。原料からの一貫生産体制の強化はシンテックの長期的な競争力を高めます。同時にシンテックは、新たな一貫生産工場を建設中で、計画どおりに進めています。さらに、それに続く第二期の増設計画の検討作業を開始しました。シリコーン事業では、発表のとおり主要な生産拠点でのシリコーンモノマーと最終製品の生産能力の増強を進めています。これらの設備投資により、世界中のお客さまに向けた供給能力と製品構成の強化を図ります。機能性化学品事業においては、医薬および工業用途のセルロース事業を拡大し、さらに、食品用途でも当社のセルロース事業の地位を高めてまいります。環境の面で持続可能な方法で、農産物の収率を高めることに寄与するフェロモン製品に、新たな製品を追加いたします。ポバール製品群の差別化にも引き続き取り組みます。

 

半導体デバイス産業は短期的な変動の影響を受けていますが、長期的には成長に向かうと確信しています。お客さまに高品質で最先端のシリコンウエハーを供給するために、実効性のある取り組みを進めてまいります。当社はフォトレジスト、フォトマスクブランクス、その他の製品など半導体デバイス産業向けの製品を供給しています。半導体デバイス産業が必要とする高品質のあらゆる素材を当社1社で提供できることを目指し、今後も製品群を拡充してまいります。レア・アースマグネットの利用は引き続き増加し、その用途も拡大しているため、一貫生産体制の強化と供給能力の増強に取り組んでいます。当社の封止材製品群および基板製品群では、5Gに必要とされる新製品を上市しました。また、当社は光ファイバーケーブルの母材であるプリフォームを供給する唯一のマーチャント・サプライヤーとして、引き続き光ファイバー市場に商品を提供してまいります。同時に、あらゆるサイズの高純度合成石英基板の需要の増加にも速やかに対応いたします。

 

当社グループは全ての生産拠点において、安全と品質を最優先にしながら高稼働を続けています。各拠点では、前述のとおりグループ全体で2万3千人の意欲あふれる仲間が、当社の使命を果たすために日々取り組んでいます。働く仲間の実行力と熱意が当社に成功をもたらします。当社では、従業員が技能を高めるとともに、全ての人が敬意をもって尊重され、活躍できる機会が等しく与えられる企業風土を育んでいます。人材育成の面でも、マネージャーの指導によるOJTに加え各種の研修や能力開発プログラムなど、多様な機会を提供しています。

 

当社は研究開発への取り組みをさらに強化しています。2019年度は、売上高の3.1%に相当する485億円を研究開発に投入しました。およそ1,000品目の新製品を上市し、1,892件の特許を取得しました。売上高の30%以上は特許に裏打ちされた製品の販売です。当該年度には、石英クロス、熱硬化性超低誘電樹脂、窒化ガリウム関連製品およびマイクロLED向け材料など新製品を上市しました。

 

当社の技術とエンジニアリングにおける専門技能は、ものづくりの支柱です。従業員による安全と品質に対する責任のある取り組みに加えて、当社が有する専門技能は、品質の高い製品を約束した期日に安定的に提供することを可能にします。当社グループでは、そこに働く全員がお客さまを中心にして仕事に取り組んでいますので、お客さまは当社と共に取り組む仕事のしやすさに気づかれるでしょう。当社はお客さまのニーズにお応えし、問題解決のお手伝いができますよう、開発力と目標を実現する技術の提供に引き続き注力してまいります。

 

当社の製品構成と研究開発の目指すところは、持続可能な開発目標(SDGs)が掲げる課題の解決につながります。当社の製品を提供することがSDGsの達成に貢献し、同時にSDGsによって当社の事業機会も拡大すると考えています。今後、人間社会が「持続的な発展とその質の向上」、そして「人間の活動がもたらす環境への負荷を大幅に減らしていくこと」を同時に追求していくために、効率性を極限まで高めることが必須と考えます。接続性、資源効率、生産性の向上、スマートインフラストラクチャ―、健康増進は、当社が現在取り組んでいる主要なテーマです。これらを進めるために、当社が生産する既存の製品を提供し、改良することに加えて、事業を通じて革新していくことに力を注いでいます。当社の素材があったからこそ、生活が改善、向上し、市場やお客さまの課題が解決できたと評価される―そのような価値のある製品を提供する―これが当社が日々取り組んでいる使命です。

 

当社は株主の皆さまへの還元に特に留意しています。1株当たり220円の年間配当金を公表しました。これは、当社の歴史の中で最も高い配当金額です。

 

当社がこれまでお客さま、株主の皆さま、地域社会に実施してきましたことをこれからも継続していくには、会社が成長を続けていくことが必須です。そのために、品ぞろえを拡充し、事業領域を広げるべく、多岐にわたる新たな計画に取り組んでいます。当社は引き続きお客さまとお客さまのニーズにお応えすることに注力し、企業統治を適切に行うことで、社会への責任を果たしてまいります。

 

株主の皆さまからお寄せいただいている信頼とお客さまのパートナーシップに厚く御礼申し上げますとともに、信越化学グループに働く皆さんの業務への献身的な取り組みに心から感謝申し上げます。

 

代表取締役社長 斉藤恭彦
代表取締役社長 斉藤 恭彦

 

事業などのリスク


有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)においては、これらのリスクの発生を防止、分散、あるいはヘッジすることにより、リスクの軽減を図っております。しかし、予想を超える事態が生じた場合には、当社グループの業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

なお、記載した事項は、当連結会計年度末(2020年3月31日)現在において当社グループが判断したものでありますが、当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではありません。

 

1. 経済動向および製品市況による影響

当社グループ製品の主要な市場がある国および地域の経済環境の動向は、当社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。また、主要製品の中には、世界的な需給環境により大きな価格変動が起きるものもあります。 当社グループは事業の多角化・グローバル化などによってそのリスクをヘッジしておりますが、製品の需要が減少あるいは価格競争が激化した場合、業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

2. 為替相場の変動による影響

2020年3月期の当社グループ連結売上高の海外売上高比率は73%となっており、今後も高い水準で推移するものと思われます。在外連結子会社等の財務諸表項目の円換算額は、為替相場に左右され、大幅な変動が生じた場合、当社グループ全体の業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。また、外国通貨建て取引についても、為替予約などによりリスクを軽減させる措置を講じておりますが、これにより当該リスクを完全に回避できる保証はなく、同様な可能性があります。

 

3. 自然災害・事故災害の影響

当社グループは、生産活動の中断により生じる損害を最小限に抑えるため、製造設備に対し定期的な防災点検及び設備保守、また、安全のための設備投資等を行うとともに、生産拠点の複数化に努めております。しかしながら、突発的に発生する災害や天災、不慮の事故等の影響で、製造設備などが損害を被ったり、サプライチェーンの分断が発生した場合は、当社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

4. 公的規制

当社グループが事業活動を行っている国及び地域では、投資に関する許認可や輸出入規制のほか、商取引、労働、特許、租税、為替等の各種関係法令の適用を受けています。これらの法令の改変は、当社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

5. 資材等の調達

当社グループの生産活動には、種々の原材料を使用しており、原材料ソースの多様化により安定的な調達に努めておりますが、これらについて供給の逼迫や遅延、供給国の通商政策の変更、また、それらに伴う価格上昇等が生じた場合、当社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

6. 急速な技術革新

当社グループの主要販売先の一つであるエレクトロニクス業界は、技術的な進歩が急速であり、当社では常に技術革新に対応できる最先端の材料開発に努めております。しかしながら、当社グループが業界と市場の変化に的確に対応できなかった場合、当社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。また、上記以外の業界向け製品についても、競争力の高い代替製品の出現により、同様の影響を及ぼす可能性があります。

 

7. 環境問題について

各種の化学物質を取り扱う当社グループは、環境に関する各種法律、規制を遵守するとともに、効率を極めることにより、地球温暖化防止に向けた省エネルギーや環境影響物質の排出抑制に積極的に取り組んでおります。しかしながら、環境に関する規制が予測を超えて厳しくなり、技術的に対応が難しくなったり、大きな新たな設備投資などの必要が生じた場合、当社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

8. 製造物責任

当社グループでは、製品の特性に応じた最適な品質の確保に全力を挙げて取り組んでいますが、予期せぬ事情により品質問題が発生した場合、当社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

9. 新型コロナウイルスの影響

新型コロナウイルスの影響を最小限に抑えるため、当社グループの事業拠点では安全衛生対策を徹底しております。しかしながら、今後の同ウイルスの蔓延や、それを受けた各国における経済活動抑制の方針が当社製品に対する需要の大幅な減少や当社事業拠点を含むサプライチェーンに損害を生じさせた場合、当社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

IR活動の基本方針


IR活動を通じて、当社の事業と経営を正確にご理解いただくとともに、株主・投資家の皆さまとの対話を重ね、ご意見に耳を傾けて経営に生かしてまいります。

情報開示方針


1. 基本方針

当社は、株主・投資家の皆さまに対する適時適切な会社情報の開示が、当社に対する理解の促進と適正な市場評価につながるとの認識のもと、金融商品取引法および当社が上場している証券取引所の定める有価証券上場規程に従い、公平かつ透明性のある情報開示を行います。

 

2. 情報開示方法

有価証券上場規程が定める重要事実に該当する情報は、東京証券取引所の適時開示情報伝達システム(TDnet)、当社ホームページ、および関係する記者クラブでの発表を通じて公開しています。

また上記以外にも、株主・投資家の皆さまの投資判断に実質的な影響を与えると考えられる情報や、当社の理解を深めていただく上で有用と考えられる情報は、本ホームページを通じて公平かつ迅速に開示していきます。

 

3. 将来の業績見通しに関する事項

当社が開示する情報のうち、将来の業績予想などに関する見通しを含むものは、公表時点で入手している情報による判断および仮定に基づいた見通しであり、リスクや不確実性を含んでいます。このため、さまざまな要素により実際の業績などが変動する可能性があることをご承知おき下さい。実際の業績に影響を与えうる重要な要素には、当社および当社グループ会社の事業領域をとりまく経済情勢、市場の動向、為替レートの変動などが含まれます。ただし、業績に影響を与えうる要素はこれらに限定されるものではありません。

 

4. 沈黙期間

当社は、決算情報の漏洩を防ぎ、公平性を確保するために、四半期ごとの決算期日の翌日から決算発表日までを沈黙期間として定めています。この期間は、決算に関するお問い合わせへの回答やコメントは差し控えさせていただきます。ただし、この期間中に有価証券上場規程の開示規則に該当する事実が発生した場合には、適時適切に開示します。