経営方針

(統合報告書2025より)

社長メッセージ

代表取締役社長 斉藤恭彦
代表取締役社長
斉藤 恭彦

最高水準の品質、
技術、サービスで、
「成長し続ける」ことに
こだわります

 

 

 

 

 

 

2025年3月期(2024年度)に、当社は以下のグラフのとおり成長軌道を伸ばしました。これは製品構成、技術、創意工夫、事業システム、そして当社社員の練達性など、当社が長年にわたり培ってきた底力をまたもや発揮したことを示すものです。

私たちは、売上、利益、そして主要な経営指標において高い水準を達成する一方で、地域社会や産業の発展に貢献していることを誇りとしています。

経常利益グラフ
 

 

 

株主の皆さまへの還元と資本管理で、2024年度に当社は新たな段階に踏み出しました。年間配当金は前期から増配の一株当たり106円としました。これにより、直近10年間の配当金の平均成長率は19.1%となります。さらに、これまでは配当性向の長期的な目安を35%としてきましたが40%に引き上げました。また、1,940億円相当の自己株の取得を実施しました。  

当社の現預金の水準について頻繁に質問を受けることに鑑み、今年1月に、「現預金はこれ以上増やさない」と表明しました。現預金の使途は、M&Aを含む大型の成長投資に加えまして、経済危機への備え、そして株主の皆さまへの還元です。私たちはエクイティスプレッドに留意しながら、現預金を適切に管理してきたと考えています。これからも、ここで述べました目的を達成するために、現預金を有効に活用してまいります。  

当社のこの取り組みは、株主の皆さまから賜りましたご理解とご支援への感謝の気持ちによるものです。

なお、当期の総還元性向は75.4%でした。  

当社が過去数年にわたる成長の軌跡をさらに伸ばし続けるため、将来を見据えた事業とその運営のあらゆる面での差別化に取り組みます。厳しい環境を乗り越えていくためには、差別化が不可欠です。私たちは、お客さまの課題解決に資する製品の提供に注力し、課題の解決への絶え間ない支援を行います。急速に変化が進む今、お客さまからの要請はますます高度になりますが、この状況は当社の成長にとって好機です。  

顧客ありきの心構えをもってこれまで以上にお客さまとの連携を進めてまいります。最高水準の品質、技術、サービスの提供により、全てのお客さまから最も信頼されるサプライヤーと評価され、当社製品がさらに幅広く使用されるよう、なお一層の努力を続けてまいります。

 

セグメントの状況

各事業セグメントの見通しや現在の取り組みについてご説明いたします。

●生活環境基盤材料事業

当社は、昨年の秋に米国で塩化ビニルと苛性ソーダの新工場を稼働させました。最新かつ最先端の塩ビ工場群を擁する当社は、波涛(はとう)が渦巻く世界市場の中、フル生産を継続しています。世界の塩ビ市場は、しばらくは荒れた状況が続くと予想されます。一方、米国市場は底堅く推移すると見ています。私たちはきめ細かなお客さまへのサービス、規模の経済とコスト構造によってこの事業で強さを発揮していきます。

 

●電子材料事業

半導体市場は、量的にも質的にも目覚ましい拡大が見られ、半導体技術は興味をそそる形で進化し続けています。当社は引き続き、生産能力の増強と製品開発の流れに適応していきます。そのために三益半導体工業の完全子会社化を実施しました。先端露光材料の新たな拠点の建設は計画どおりに進んでいます。

私たちは研究開発の強化にも力を注いでいます。半導体製造の新機軸が展開する中で、当社は培ってきた専門知識とノウハウを生かしていきます。私たちは、半導体材料のあらゆる分野の専門家として、半導体産業において一層重要な役割を果たしていきます。

当社が製品を供給する業界や市場に対する地政学的影響は高まってきています。私たちはこの点にも注意深く取り組んでいます。こうした状況の中で、お客さまのために事業の舵取りを巧みに行い、当社の優位性を生かした対応をする所存です。

 

●機能材料事業

当社はさまざまな分野と用途で、より多く新製品を投入し、お客さまの要望に応えていきます。そのために、ケイ素化学、セルロースその他の合成技術を極めていきます。これからも産業と市場との接点をさらに増やすことで、当社の販売領域のさらなる拡大を図ります。一方、汎用品化した製品群への取り組みは優先度を引き下げました。製品開発に一層注力し、当社製品が用いられれば用いられるほど、産業や人々の暮らしがより良いものとなるよう努めていきます。

 

●加工・商事・技術サービス事業

このセグメントの事業は、当社グループのシナジー効果 を高めることに貢献しています。

近年立ち上げた二つの新しい事業は順調に成長しています。一つはGaNデバイスのための新技術を展開するものです。AI革命の到来により、電力管理が不可欠であり、GaNデバイスがそこで重要な役割を果たすことになります。もう一つは微小材料システムとして、発光デバイスや半導体パッケージ基板製造のための製造装置や材料を提供するものです。当社は、先端半導体パッケージングのための信越プロセス(信越デュアルダマシン法)を発表しました。これからも素材技術と装置技術の融合を推進していきます。

 

カーボンニュートラルへの取り組み

カーボンニュートラルに向けた当社の取り組みについて近況をお伝えします。当社は、2050年までに温室効果ガス排出量(スコープ1,2)を実質ゼロにするカーボンニュートラルに取り組んでいます。

2024年度は、2023年度に比べ温室効果ガス排出量の生産量原単位を改善することができました。2024年度の実績は、当社グループで1990年度比56.9%(前年度比0.1ポイントの改善)、当社で48.6%(前年度比4.8ポイントの改善)となりました。

一方、絶対量では、お客さまの要望に応えるために生産能力を拡大したことから、スコープ1および2の GHG排出量は3.4%増加しました。この生産能力の拡大においては、当社の工場設備が各業界で最もエネルギー効率の高い操業を実現できるよう、最新鋭の高度な技術を確実に導入しています。同様に、当社はこれまで、既存の設備に対しても手を緩めることなく、エネルギー効率の向上に取り組んできました。カーボンニュートラルの目標達成のためには多くの課題を克服しなければなりませんが、当社は全力でこれらの課題に挑戦いたします。

当社グループは温室効果ガスの削減に貢献する数多くの製品を擁しています。例えば、日本政府が定めるカーボンニュートラルにとって不可欠な分野への当社グループの売 上高は約7割です。これからもカーボンニュートラルに貢献する製品を拡大してまいります。

お客さまと株主の皆さま、そして地域社会に一層の貢献をしていくために、私たちは成長し続けなければならないことを、私は改めて強調します。当社はお客さまとお客さまのご要望に焦点を合わせて皆さまの関心に応え、良き企業統治を約束して株主の皆さまにとり良き投資先であり続け、地域社会の期待に応えるべく責任を果たしてまいります。

株主の皆さまからのご信頼とお客さまのパートナーシップに厚く御礼申し上げ、信越化学グループに働く全ての皆さんの仕事への真摯な取り組みに感謝いたします。

 

人的資本とダイバーシティ

働く人のプロの職業人としての能力を高め強化するために、私たちはさまざまな方法による人財への投資を行っています。ダイバーシティ推進の一環として、女性の独立社外取締役・監査役と女性社員による座談会を開催しました。その目的は、女性の活躍と仕事に関する意見交換を促進することです。日本の人口動態より、昨今のダイバーシティは、女性活用という働き手(量)の 話になりがちですが、私はむしろ多様な発想(質)が企業価値につながることを期待しています。

 

サプライチェーン全体の人権尊重

当社は責任あるサプライチェーンを構築するために、サプライヤーに「信越化学グループ人権方針」、「調達基本方針」、「CSR調達ガイドライン」をご理解いただくことに注力しています。その中で、差別を排除し、国際労働機関の労働基準を守り、不当な労働行為をさせないことに取り組んでいます。 また、全ての調達品から紛争や人権侵害などへの関与が明らかな鉱物を排除することも積極的に行っています。

 

働く人の安全の確保

従業員の安全は当社が事業を行う上での大前提です。現場でのゼロ災害を達成するために、潜在的な小さなミスや事故を排除する基本的なことを行っています。そのために、決められた規則や手順を必ず守り、危機に対する感性を高め、リスクを速やかに排除するという3つの行動指針を徹底しています。

 

ガバナンスとリスクマネジメント

取締役会は企業統治の中核です。取締役会は取締役9名で構成され、うち5名は独立社外取締役(うち、米国人1名、女性1名)です。また、当社には監査役会があります。監査役4名のうち3名は独立監査役(うち、女性2名)となっております。皆さまには、株主還元、投資、サステナビリティなどをはじめ当社の重要案件について審議に参加していただき、提言や指摘をいただいています。また、世界情勢や経済の不確実性を考えると、リスク管理は非常に重要です。当社では、設備投資や原材料調達においてカントリーリスク等の評価を重視しております。さらに情報セキュリティを強化し、サイバー攻撃や情報漏えいへの対策にも鋭意取り組んでおります。

 

社会の皆さまのよきパートナーとして

お客さまと株主の皆さま、そして地域社会に寄与し続けていくために、私たちは成長し続けなければなりません。当社はお客さまとお客さまのご要望に焦点を合わせ、企業統治により株主の皆さまにとり良き投資先であり続け、地域社会ではその責任を果たしてまいります。
 株主の皆さまからのご信頼とお客さまのパートナーシップに厚く御礼申し上げ、信越化学グループに働く全ての皆さんの仕事への真摯な取り組みに感謝いたします。

 

代表取締役社長 斉藤恭彦
代表取締役社長 斉藤 恭彦

情報開示方針


1. 基本方針

当社は、株主・投資家の皆さまに対する適時適切な会社情報の開示が、当社に対する理解の促進と適正な市場評価につながるとの認識のもと、金融商品取引法および当社が上場している証券取引所の定める有価証券上場規程に従い、公平かつ透明性のある情報開示を行います。

 

2. 情報開示方法

有価証券上場規程が定める重要事実に該当する情報は、東京証券取引所の適時開示情報伝達システム(TDnet)、当社ホームページ、および関係する記者クラブでの発表を通じて公開しています。

また上記以外にも、株主・投資家の皆さまの投資判断に実質的な影響を与えると考えられる情報や、当社の理解を深めていただく上で有用と考えられる情報は、本ホームページを通じて公平かつ迅速に開示していきます。

 

3. 将来の業績見通しに関する事項

当社が開示する情報のうち、将来の業績予想などに関する見通しを含むものは、公表時点で入手している情報による判断および仮定に基づいた見通しであり、リスクや不確実性を含んでいます。このため、さまざまな要素により実際の業績などが変動する可能性があることをご承知おき下さい。実際の業績に影響を与えうる重要な要素には、当社および当社グループ会社の事業領域をとりまく経済情勢、市場の動向、為替レートの変動などが含まれます。ただし、業績に影響を与えうる要素はこれらに限定されるものではありません。

 

4. 沈黙期間

当社は、決算情報の漏洩を防ぎ、公平性を確保するために、四半期ごとの決算期日の翌日から決算発表日までを沈黙期間として定めています。この期間は、決算に関するお問い合わせへの回答やコメントは差し控えさせていただきます。ただし、この期間中に有価証券上場規程の開示規則に該当する事実が発生した場合には、適時適切に開示します。

事業等のリスク


有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。

当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)においては、これらのリスクの発生を防止、分散、あるいはヘッジすることによりリスクの軽減を図っています。しかし、予想を超える事態が生じた場合には、当社グループの業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

なお、記載した事項は、当連結会計年度末(2024年3月31日)現在において当社グループが判断したものですが、当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではありません。

 

① 経済動向および製品市況による影響

当社グループ製品の主要な市場がある国および地域の経済環境の動向は、当社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。また、主要製品の中には、世界的な需給環境により大きな価格変動が起きるものもあります。 当社グループは事業の多角化・グローバル化等によってそのリスクをヘッジしていますが、製品の需要が減少あるいは価格競争が激化した場合、業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

② 為替相場の変動による影響

2024年3月期の当社グループ連結売上高の海外売上高比率は78%となっており、今後も高い水準で推移するものと思われます。在外連結子会社等の財務諸表項目の円換算額は、為替相場に左右され、大幅な変動が生じた場合、当社グループ全体の業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。また、外国通貨建て取引についても、為替予約等によりリスクを軽減させる措置を講じていますが、これにより当該リスクを完全に回避できる保証はなく、同様な可能性があります。

 

③ 自然災害・事故災害、感染症等の影響

当社グループは、生産活動の中断により生じる損害を最小限に抑えるため、製造設備に対し定期的な防災点検及び設備保守、また、安全のための設備投資等を行うとともに、生産拠点の複数化に努めています。しかしながら、突発的に発生する災害や天災、不慮の事故等の影響で、製造設備等が損害を被ったり、サプライチェーンの分断が発生した場合は、当社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。
 また、当社グループの事業拠点では安全衛生対策を徹底しています。しかしながら、今後発生しうる感染症等の蔓延や、それを受けた各国における経済活動抑制の方針が当社製品に対する需要の大幅な減少や当社事業拠点を含むサプライチェーンに損害を生じさせた場合、当社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 公的規制

当社グループが事業活動を行っている国及び地域では、投資に関する許認可や輸出入規制のほか、商取引、労働、特許、租税、為替等の各種関係法令の適用を受けています。これらの法令の改変は、当社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 資材等の調達

当社グループの生産活動には、種々の原材料を使用しており、原材料ソースの多様化により安定的な調達に努めていますが、これらについて供給の逼迫や遅延、供給国の通商政策の変更、また、それらに伴う価格上昇等が生じた場合、当社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 急速な技術革新

当社グループの主要販売先の一つであるエレクトロニクス業界は、技術的な進歩が急速で、当社では常に技術革新に対応できる最先端の材料開発に努めています。しかしながら、当社グループが業界と市場の変化に的確に対応できなかった場合、当社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。また、上記以外の業界向け製品についても、競争力の高い代替製品の出現により、同様の影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦ 環境問題について

各種の化学物質を取り扱う当社グループは、環境に関する各種法律、規制を遵守するとともに、効率を極めることにより、地球温暖化防止に向けた省エネルギーや環境影響物質の排出抑制に積極的に取り組んでいます。しかしながら、環境に関する規制が予測を超えて厳しくなり、技術的に対応が難しくなったり、大きな新たな設備投資等の必要が生じた場合、当社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

⑧ 製造物責任

当社グループでは、製品の特性に応じた最適な品質の確保に全力を挙げて取り組んでいますが、予期せぬ事情により品質問題が発生した場合、当社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

IR活動の基本方針


IR活動を通じて、当社の事業と経営を正確にご理解いただくとともに、株主・投資家の皆さまとの対話を重ね、ご意見に耳を傾けて経営に生かしてまいります。

情報開示方針


1. 基本方針

当社は、株主・投資家の皆さまに対する適時適切な会社情報の開示が、当社に対する理解の促進と適正な市場評価につながるとの認識のもと、金融商品取引法および当社が上場している証券取引所の定める有価証券上場規程に従い、公平かつ透明性のある情報開示を行います。

 

2. 情報開示方法

有価証券上場規程が定める重要事実に該当する情報は、東京証券取引所の適時開示情報伝達システム(TDnet)、当社ホームページ、および関係する記者クラブでの発表を通じて公開しています。

また上記以外にも、株主・投資家の皆さまの投資判断に実質的な影響を与えると考えられる情報や、当社の理解を深めていただく上で有用と考えられる情報は、本ホームページを通じて公平かつ迅速に開示していきます。

 

3. 将来の業績見通しに関する事項

当社が開示する情報のうち、将来の業績予想などに関する見通しを含むものは、公表時点で入手している情報による判断および仮定に基づいた見通しであり、リスクや不確実性を含んでいます。このため、さまざまな要素により実際の業績などが変動する可能性があることをご承知おき下さい。実際の業績に影響を与えうる重要な要素には、当社および当社グループ会社の事業領域をとりまく経済情勢、市場の動向、為替レートの変動などが含まれます。ただし、業績に影響を与えうる要素はこれらに限定されるものではありません。

 

4. 沈黙期間

当社は、決算情報の漏洩を防ぎ、公平性を確保するために、四半期ごとの決算期日の翌日から決算発表日までを沈黙期間として定めています。この期間は、決算に関するお問い合わせへの回答やコメントは差し控えさせていただきます。ただし、この期間中に有価証券上場規程の開示規則に該当する事実が発生した場合には、適時適切に開示します。