製品の品質の向上、製品の安全性管理

方針

お客さまに高品質な製品を安定して供給します。

課題の認識

信越化学グループは品質問題ゼロに取り組んでいます。

高付加価値製品はもとより、汎用製品においても優れた品質は非価格競争力となります。また、製品を安定供給していくためには、営業、研究、製造、品質保証、そして出荷部門がそれぞれの役割を緻密に果たしていくことが必須です。さらに、製品の品質にとって、特性だけでなく環境や健康に対する安全性も大切な要素です。

品質管理

信越化学グループは、お客さまが求める高い品質の製品を安定して供給することに注力しています。品質管理では、規格外製品を作らない、出荷しないという「守りの品質管理」と、品質のバラツキを限りなく抑えて、他社がまねのできない品質を作り上げる「攻めの品質管理」の両方が必須と考えています。そのために、厳格な品質マネジメントシステムを構築し、品質の向上やバラツキ、ムダの低減に継続して取り組んでいます。

当社の各事業部やグループ各社は、営業部門、研究開発部門、製造部門、品質保証部門が以下のような役割で連携し、お客さまのご要望にお応えしています。

営業部門

お客さまのご要望を理解し、それを研究開発部門や製造部門に速やかに正確に伝えています。

研究開発部門および製造部門

お客さまのご要望を元に、新規製品の研究開発や既存製品の改良に取り組んでいます。

品質の均一化を図るために、製造工程の自動化を進めています。

品質保証部門

製品の特徴やお客さまの使用方法も考慮し、品質の最終確認を厳格に実施しています。

品質測定者や測定サンプル調製、測定手順によるバラツキへの対策として、測定の自動化を進め品質測定の精度を高めています。また、測定結果をデジタルデータ化し利用することで、検査表やラベル作成時の転記ミスなどを防止しています。

さらに年に3回、各工場の品質保証部長を集めた品質保証部門会議を行い、各工場の課題を整理し、期ごとの品質目標を決め、進捗を確認しています。また、同様に品質分析技術会議を行い、各工場の取り組み内容の報告を行うことで品質保証のDX化、新規検査、分析技術の共有を図っています。

なお、国内および海外のほとんど全ての製造拠点でISO9001を取得しています。加えて、信越化学の一部の工場やグループ会社では、IATF16949などの品質マネジメントシステムの認証も取得しています。

また、お客さまから品質に関するお問い合わせを受けてから、2営業日以内にお客さまに対応することを定め、徹底しています。

IATF16949
自動車向けの品質マネジメントシステム

品質監査・支援

各工場において、品質と顧客サービスの向上を目的とした品質監査を2000年から毎年実施し、品質状況の確認と品質目標に対する取り組み状況の報告を行っています。そして、重要クレーム対策の確認と品質レベルの向上を図っています。

品質監査では、品質管理活動の状況をお客さまと品質コストの2つの視点で評価し、それにより品質問題の「真の原因は何か」を解明し、恒久的な再発防止に取り組んでいます。また、毎年11月を「品質月間」として定めて、グループ全体で品質管理の強化に努めています。

2023年の品質監査では、重点項目として以下の内容について監査しました。

  1. 製造工程のバラツキ低減への取り組み:従来の製造技術の精度向上に加え、DX、AIの導入により品質の改善状況を確認。
  2. 品質トラブルの対策事例と水平展開状況:過去の品質トラブルに対して論理的な恒久対策を実施、継続できているか、他の製品にも水平展開できているかを確認。
  3. 事業本部監査:営業・製造・品質保証部がその事業や製品にとって重要と考える品質を取り上げ、品質向上の計画や実施状況を営業が報告し、確認する。

さらに、品質水準の向上のために、シックスシグマ活動を全社的に展開しています。

品質監査
(2023年8月 信越化学 鹿島)
第24回信越シックスシグマ活動成果報告会
(2024年2月 信越化学 本社)

シックスシグマ活動
1980年代にモトローラ(米国)で開発された品質改善手法。バラツキが発生しているプロセスに着眼し、バラツキを抑えることにより品質不良の発生を抑止し、品質改善を図ろうとする活動で、グループ全体で取り組んでいる。

台湾信越シリコーン社(台湾)の取り組み

品質保証部が営業・研究開発・製造の各部門と連携

台湾信越シリコーン社の新竹工場では、ISO9001の品質管理システムに従って製品の安全性を管理しています。具体的には、原材料の受入検査を実施し、合否判定を行い、化学物質情報の表示を行っています。また、検査、測定機器の定期的なメンテナンスや、製品設計の変更実行の支援なども行っています。さらに、四半期ごとに社内品質監査を実施し、是正および予防対策の監督と是正効果の確認をしています。

当社では品質保証部が、営業部門、研究開発部門、生産部門と以下の取り組みで連携しています。

  • 営業部との連携
    製品仕様書の作成、COA※1、QC工程図※2の作成、保存期限と保存条件の説明、クレーム報告書の作成、工程変更連絡書の顧客への提供、顧客の監査アンケートや検査に関する質問への回答。
  • 技術センターとの連携
    製品設計の変更の実行、試行前後の議論、新製品の規格の策定、顧客のクレームに関する化学分析。
  • 製造部との連携
    中間体および製品の検査と判定、現場の作業員と幹部の品質の教育訓練の支援、四半期ごとの社内品質監査を実施、顧客のクレームの原因究明、是正および予防対策の追跡、品質改善会議の開催、工程異常の是正および予防対策の監督と是正後の効果の確認。

また、技術センター所長室の担当者がSDS(Safety Data Sheet)を作成・発行し、製品の安全性を確保しています。製品輸送の安全対策として、事故が起きても外部に影響を与えないように決められた方法で充填・包装し、危険物の輸送は国連基準に従って、UN番号、危険物分類、絵表示分類などを表示しています。さらに顧客には、製品仕様書、COA、QC工程図を提出し、保存期限と保存条件についても説明しています。

今後も以下に注力し、お客さまが求める高い品質の製品を安定して供給していきます。

  1. お客さまに正しいデータをお届けするために、品質保証部門の各項目の検査値を出荷報告システムに自動的に取り込む。
  2. 品質保証部門の検査員に対する、標準的な手順に従った訓練の実施。
  3. 各部門の社内品質監査での指摘への改善の確認と追跡。
  4. 製品への異物の混入防止や有害物質が含まれていない製品の管理。

※1COA(Certificate of Analysis)
製品のラベルに印刷された仕様を満たしていることを確認するために作られた法的文書。製造者がその製品について適切に検討し、必要な品質管理プロセスを完了したことを顧客に保証するもの。

※2QC工程図(Quality Control Chart)
原材料の入荷から出荷までの工程ごとに管理特性や管理方法が記載されている。

製品の安全性管理

製品の安全性を社内の規程に基づき、製品の開発から輸送まで管理しています。

当社グループは、化学物質の開発、製造、物流、使用、消費、廃棄の過程において、化学物質による健康障害の防止と環境影響の最小限化を図っています。法令などにのっとり化学物質を適切に設計し、行政や所属団体などと連携協力して収集した最新情報を基に安全性を評価し、最適な設備で製造して、化学物質の排出量の削減に努めています。例えば、POPs条約を受けて、PFOS、PFOAは化審法※1で第一種特定化学物質(製造使用の禁止)に指定されました。製品原料として使用していたPFOAについては、すでに代替原料に変更済みです。また、PFOSを含む泡消火剤については使用が認められていますが、一部を除きPFOSを使用しない泡消火剤への切り替えが完了しました。その他、国内外で規制予定の物質などについても、使用実績の調査と変更対応を進めています。さらに、改正労働安全衛生法で定められた、化学物質の製造取り扱い時に労働者への影響を最小限化するための規制に従って、工程改善などによる使用量の削減と、より安全な代替品化を推進しています。

新しい化学物質の安全性については、開発段階で環境や健康へのリスク評価を行い、確認しています。また、新しい化学物質の開発では、労働安全衛生法や化審法、EUのRoHS指令※2などで指定されている有害物質を使用しない製品や製造技術に注力しています。さらに、法令に従って義務付けられている届出や報告を、確実に実行しています。

お客さまや輸送業者への適切な情報伝達のため、お客さまに製品の危険性や有害性などの情報をSDS※3で提供しています。また、お客さまにSDSを通して、法令遵守や除害設備の設置、保護具の着用など、製品をより安全に取り扱うためのお願いをしています。さらに、輸送上の安全対策として、輸送業者にイエローカード※4を発行するとともに、容器には容器イエローカード※5を貼付しています。製品の容器や包装に、労働安全衛生法に従い、GHS※6に従った危険性や有害性の絵表示も実施しています。

※1化審法
「化学物質の審査および製造等の規制に関する法律」の略称。人の健康および生態系に影響を及ぼす恐れがある化学物質による環境の汚染を防止することを目的とした法律。

※2RoHS指令(The Restriction of the use of certain Hazardous Substances)
電気電子機器に含まれる特定有害物質の使用制限に関するEU指令。

※3SDS(Safety Data Sheet)
安全データシート。化学物質の化学的、物理的性状とともに有害性や緊急時の措置などに関する情報を記載している。化学物質の安全な取り扱いや事故防止を目的に、製造、輸入、販売の事業者が顧客に販売・出荷する際に提供している。

※4イエローカード
化学物質の輸送時の安全対策として、事故時の処置に関する情報を記載した黄色のカード。タンクローリーなどの輸送時に運送業者に渡し、輸送時に携帯している。

※5容器イエローカード
混載便や少量品の輸送ではイエローカードが活用できないため、容器ごとに安全情報(化学物質名の国連番号と緊急時応急措置指針番号)を記載したラベルを貼付している。

※6GHS (The Globally Harmonized System of Classification and Labeling of Chemicals)
化学物質の分類および表示方法について、国際的に調和(統一)させたシステム。

関連データ

項目 内訳 対象範囲 単位 2021年度 2022年度 2023年度
製品の安全性に関する教育 研修の受講者数(延べ人数) 連結 49,851 71,142 82,735