信越化学グループと気候変動
2050年カーボンニュートラル実現に向けた計画
信越化学グループは2050年カーボンニュートラルに向け、
温室効果ガス排出量(Scope1、Scope2)を実質ゼロとするための計画を策定しました。
これまでの取り組み
1)当社の経営に包摂された温室効果ガス削減への取り組み
あらゆる経済活動において、環境負荷を抑えつつ社会の持続的な発展と質の向上を実現することが求められています。会社が事業を拡大し成長を続けていくためには、コスト競争力が必須です。このため当社グループは、資源、エネルギーの利用の効率を極めることに予てから注力してきました。こうした取り組みは、温室効果ガス排出量の削減にもつながり、カーボンニュートラルとの親和性の高いものといえます。
「効率を極める」取り組みの代表例が塩化ビニル樹脂(以下、塩ビ)事業です。1970年代、競争の激しい国内の塩ビ業界で事業を持続するために、当社の技術陣は塩ビの原料であるモノマーの生産も含め、効率を極めることに挑戦しました。すなわち、「投入する原料に対して生産量を最大化し」、「電気やガスなどのエネルギー使用量を最小にする」ことです。
信越化学 鹿島工場で開発され導入された当社独自の塩ビの生産技術は、1974年に生産を開始した米国の子会社シンテック社にも導入されました。同社の設立を企画し提案したのが前会長の金川千尋です。信越化学の塩ビの製造技術に金川による一切の無駄を排した合理的な経営が融合し、シンテック社は極めて競争的な世界の塩ビ市場で十分に戦うことができるコスト競争力を実現しました。効率を極める金川経営に終わりはありません。工場の新設や増設では、常に革新的な技術を導入することで生産性を極限まで高め続けることで、世界最大の塩ビメーカーへと成長を遂げました。
1990年、金川が信越化学の代表取締役社長に就任すると、シンテック社で実践してきた合理的な経営と生産への取り組みが信越化学に逆輸入されました。金川の発案により1992年にG(合理化)委員会が発足し、代表取締役副社長の小柳俊一が委員長に就任しました。G委員会は製造部門における合理化と生産性の向上に意欲的かつ継続的に取り組みました。2004年に現代表取締役取締役会議長の秋谷文男が同委員会の委員長に就任するとG委員会の活動はさらに活発となり、その範囲は信越半導体をはじめとしたグループ会社にも拡大しました。また、シックスシグマ活動*との相乗効果により、毎年大きな合理化を達成してきました。これまで同委員会が手掛けた合理化プロジェクトの件数は信越化学だけでも約2万5千件を超え、当社の国際競争力の強化に貢献しています。
- *シックスシグマ活動
1980年代にモトローラ(米国)で開発された品質改善手法。ばらつきが発生しているプロセスに着眼し、ばらつきを抑えることにより品質不良の発生を抑止し、品質改善を図ろうとする活動で、グループ全体で取り組んでいる。
2)これまでの削減実績
当社グループは、2010年度に中期目標として「2015年度に1990年度比で温室効果ガス排出の生産量原単位を50%にする」ことを定めました。さらに、2016年度には新たな中期目標として、「2025年度に1990年度比で温室効果ガス排出の生産量原単位を45%(55%減)にする」ことを定め、省エネルギーやコージェネレーションシステムの導入などにより、目標の達成に取り組んできました。
2023年3月期の実績は、当社グループで1990年度比54.2%(45.8%減)、信越化学で同46.8%(53.2%減)です。
当社グループの温室効果ガス排出量の94%はエネルギーの使用によるものです。日本の「エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)」は、「エネルギー使用量を原単位で年1%以上削減」することを努力目標として定めています。1990年度から年1%で削減した場合、2023年3月期で1990年度比約28%の削減率となります。当社の温室効果ガス排出量の削減実績は、省エネ法の努力目標を大幅に上回っています。
2050年カーボンニュートラル達成策
上記の通り、当社グループはこれまで生産量原単位での温室効果ガス排出量の削減を進めてきました。これまで取り組んできた生産量原単位での削減に加えて、絶対量での温室効果ガス排出量の削減により、カーボンニュートラルを達成するための計画を策定しました。
1)現在取り組んでいる削減策
当社グループは、前項で述べた取り組みをさらに強化することに加え、現在、以下の削減策に取り組んでいます。また、新たな削減策の検討にも注力していきます。
削減策 | 詳細 |
①電力における排出量の低減 |
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②製法、製造の改善と革新など |
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③カーボンニュートラル天然ガス(排出権付き天然ガス)、水素などの活用 |
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④リサイクルの推進 |
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2)2050年に向けた取り組み
現時点で想定している削減策は以下の通りです。
削減策 | 詳細 |
①電力における排出量の削減 |
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②グリーン水素とブルー水素の活用 |
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③製法、製造の改善などの継続 |
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④CO2の分離回収および活用 |
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⑤バイオマス燃料の活用 |
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⑥リサイクルの推進 |
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⑦カーボンオフセット |
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当社グループの削減策
- ※「製法、製造の改善と革新など」は、水素の活用、バイオマス燃料の活用、リサイクルの推進を含みます。「電力に関するもの」は、再生可能エネルギーの購入と太陽光発電設備の設置を含みます。
当社が想定している2050年に向けた削減策の構成比は、上図の通りです。今後の技術革新に応じて、最適な削減手段を選択していきます。
なお、今後米国子会社のシンテック社が生産能力の増強を予定しているため、当社グループの温室効果ガス排出量は2025年頃に増加しますが、前述の方策を実施することで減少に転じる計画です。
カーボンニュートラル社会の実現に貢献するためのその他の取り組み
1)ライフサイクルアセスメント実施のための取り組み
当社グループは、ライフサイクルアセスメントを実施することで、サプライチェーン全体での温室効果ガスの削減に貢献していきます。
2)物流における温室効果ガス排出量の削減
製品輸送時に排出される温室効果ガスの削減に取り組んでいます。この取り組みは、温室効果ガスのスコープ3排出量の削減に寄与します。
物流における削減 | |
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削減例 | 削減に寄与しているスコープ3排出量のカテゴリー |
メタノール輸送におけるモーダルシフト* (タンクローリー→鉄道) |
カテゴリー4「製品の輸送時による排出」 |
シリコンウエハー輸送におけるモーダルシフト (航空機→船舶) |
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シリコーン製品輸送におけるモーダルシフト (トラック→鉄道) |
- *モーダルシフト
トラックなどによる貨物輸送を、環境負荷の小さい鉄道や船舶に転換すること。
信越化学 直江津が「エコレールマーク」取り組み企業に認定
2022年3月に、信越化学 直江津が、国土交通省から「エコレールマーク」の取り組み企業として認定されました。
鉄道貨物輸送は他の輸送機関と比べ、地球温暖化の原因となるCO₂排出量が格段に少ない、環境に優しい輸送手段です。「エコレールマーク」は、貨物の輸送を積極的に鉄道輸送に切り替えている企業を、「エコ物流している企業」として認定する制度です。かねてより、当社は直江津の製品輸送のモーダルシフトを進めていましたが、年間の鉄道利用数量がエコレールマーク制度の認定条件を満たし、この度、認定されました。
JR貨物黒井駅で貨車に乗せられる製品
工場からはトラックに乗せタンクコンテナで運ばれます
3)温室効果ガス排出量の削減に貢献する製品の製造販売の拡大
当社グループの製品は住宅やインフラストラクチャー、電気自動車、DX、GXをはじめとした幅広い分野に利用され、生活や産業の基盤を支えています。これらの製品の多くは、温室効果ガスの削減にも寄与しています。2021年6月に日本政府が2050年カーボンニュートラルを目指す上で不可欠な14の分野を掲げましたが、当社グループの2022年度の連結売上高に占める当該14分野への売上比率は約7割に上ります。今後とも、こうした製品の開発、製造、販売の拡大に注力することで、社会全体のカーボンニュートラルに貢献していきます。
サステナビリティーサステナブルな社会の実現に向けてー快適な暮らし
サステナビリティー信越化学グループと気候変動ー戦略ー2)気候変動による事業機会
成長が期待される14分野
出典:2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略(2021年6月日本政府発表)
https://www.meti.go.jp/press/2021/06/20210618005/20210618005-3.pdf
カーボンニュートラル社会の実現に貢献する信越化学グループの製品と技術
成長が期待される14分野※1 | グリーン成長戦略で挙げられている製品や技術 | グリーン成長戦略に貢献する 信越化学グループ製品や技術※2 |
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①洋上風力・太陽光・地熱産業 (次世代再生可能エネルギー) |
・洋上風力発電 |
・塩ビ(電線被覆) |
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②水素・燃料アンモニア産業 |
・水素発電 |
・塩ビ(電線被覆) |
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③次世代熱エネルギー産業 |
・ガスの脱炭素化(合成メタンや水素の直接利用、クレジットでオフセットされたLNGの導入、CO2分離回収利用技術の活用など) |
・半導体材料※3 |
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④原子力産業 |
・高速炉 |
・半導体材料※3 |
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⑤自動車・蓄電池産業 |
・電気自動車、燃料電池車、プラグインハイブリッド車、ハイブリッド車 |
・塩ビ(電線被覆) |
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⑥半導体・情報通信産業 |
・パワー半導体やメモリなどの半導体 |
・塩ビ(電線被膜) |
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⑦船舶産業 |
・水素やアンモニアエンジン搭載船舶 |
・半導体材料※3 |
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⑧物流・人流・土木インフラ産業 |
・スマート交通(自動運転化など) |
・塩ビ(塩ビ管) |
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⑨食料・農林水産業 |
・化学農薬・化学肥料の低減、化石燃料使用抑制 |
・塩ビ(農業用フィルム) |
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⑩航空機産業 |
・水素航空機 |
・半導体材料※3 |
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⑪カーボンリサイクル・マテリアル産業 |
・CO2吸収型コンクリート |
・塩ビのリサイクル |
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⑫住宅・建築物産業・次世代電力マネジメント産業 |
・ZEH、ZEB(ゼロエネルギーの住宅やビル) |
・塩ビ(樹脂窓、塩ビ管、電線被膜) |
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⑬資源循環関連産業 |
・ごみ焼却施設におけるCCU(炭素吸収利用技術)プラント |
・塩ビのリサイクル |
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⑭ライフスタイル関連産業 |
・住まいや移動のトータルマネジメント(ZEH、ZEB、需要側機器、地域の再生可能エネルギー、電気自動車や燃料電池車などの組み合わせ、最適化) |
・塩ビ(樹脂窓、塩ビ管用、電線被膜) |
- ※1 出典:「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」(2021年6月
日本政府発表)
https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/global_warming/ggs/index.html - ※2 将来の製品も含みます。また、製品や技術の文字の色は事業セグメントを表しています。
【事業セグメント】 生活環境基盤材料 電子材料 機能材料 加工・商事・技術サービス - ※3 半導体材料は、シリコンウエハー、フォトレジスト、マスクブランクス、封止材、ペリクル、合成石英、高純度シランなどを指します。半導体材料は分野⑥の半導体産業に該当しますが、半導体材料を使用して製造された半導体はさまざまな分野の制御システムなどに貢献するため、⑥以外の分野にも記載しました
TCFD推奨項目の開示
ガバナンス
サステナビリティ委員会が、当社グループの各事業体とともに気候変動対策に取り組んでいます。
サステナビリティ委員会は、当社グループのコーポレートガバナンスにおける「重要な課題ごとの委員会」の一つです。社長を委員長とし、信越化学の取締役や執行役員、部門長、グループ会社のサステナビリティ担当者の約60名で構成され、事業とサステナビリティの取り組みが一体となる取り組みを推進しています。
サステナビリティーマネジメントーサステナビリティの取り組みの体制
当社は、2021年度に気候変動関連の各課題を検討するカーボンニュートラルタスクフォースを同委員会内に設けました。タスクフォースは、全体会議を概ね3ヶ月ごとに行い最新の情報を社長に報告し、社長はこの報告を受け、方針を決定しました。そして、タスクフォースはこの方針のもと調査、検討などの活動を行い、全取締役、監査役および執行役員が出席する常務委員会や取締役会で、気候変動関連の取り組みを報告しました。これらの取り組みを経て、2050年のカーボンニュートラルの実現に向けた計画を策定し、2023年5月末に公表しました。
戦略
当社グループは、2050年カーボンニュートラル実現に向けた計画の推進を、重要な経営課題と位置づけています。そして、シナリオ分析をはじめとするTCFD提言による情報開示を進めると同時に、この分析を通じ事業に影響をおよぼす重要なリスクと機会を特定し、経営に反映させています。
シナリオ分析
2021年度に当社事業についてシナリオ分析を行い、気候変動が事業活動に与えるリスクと機会を特定しました。
1)想定したシナリオ
気候変動による影響を踏まえ、2050年の時点における1.5℃および4℃のシナリオを想定しました。
- 出典︓ 気候変動に関する政府間パネル( IPCC)「第6 次評価報告書」
事象 | 1.5℃シナリオ | 4℃シナリオ |
陸域における極端な高温 |
1850年から1900年比で、10年に一回規模の極端な高温(+1.9℃)は、2081年から2100年に頻度が4.1倍になる。 |
1850年から1900年比で、10年に一回規模の極端な高温(+5.1℃)は、2081年から2100年に頻度が9.4倍になる。 |
陸域における大雨 | 1850年から1900年比で、10年に一回規模の極端な湿潤化(+10.5%)は、2081年から2100年に頻度が1.5倍になる。 |
1850年から1900年比で、10年に一回規模の極端な湿潤化(+30.2%)は、2081年から2100年に頻度が2.7倍になる。 |
世界平均海面水位 |
1995年から2014年の平均と比べ、2100年までに28cm~55cm上昇する。 |
1995年から2014年の平均と比べ2100年までに63cm~101cm上昇する。 |
電源構成における再生可能エネルギー比率 |
2050年に発電量全体の90%を占める。 |
|
財務影響 |
炭素税導入による経済減速、電力価格の上昇による企業の利益への影響。 |
風水害の激甚化による経済の停滞、保険料の増加。 |
- 出典:
- 気候変動に関する政府間パネル(IPCC) 「第6次報告書」
- 国際エネルギー機関(IEA)「Net Zero by 2050」
- 三菱総合研究所 「気候変動対応・環境開示(TCFD)」
①気候変動による事業機会:1.5℃シナリオ
用途 | 詳細 | 収益への 影響度 |
樹脂窓 |
塩化ビニル樹脂は断熱性に優れているため樹脂窓に使用されている。省エネ住宅の普及とともに樹脂窓の需要増加が見込まれる。 |
大 |
電気自動車、ハイブリッド車、燃料電池車 |
半導体シリコンは、モーターの回転数を制御するインバーターなどのパワー半導体デバイス、自動運転、AI向けロジック半導体デバイス等に使用される。 高性能で小型のレア・アースマグネットは、車両全体の重量を軽くし、燃費性能を上げられることから、電気自動車やハイブリッド車、燃料電池車の駆動モーターや車両のさまざまなモーターへの利用が広がる。シリコーンの放熱材料は、リチウムイオン電池や各種電子制御装置などの熱対策に使用されている。熱による動作不良や故障の防止に役立ち、需要の拡大が見込まれる。 |
大 |
風力発電機 |
レア・アースマグネットは、洋上風力発電機の高効率化および発電機のメンテナンスコストの削減に寄与するため、需要の拡大が見込まれる。 |
大 |
エアコン |
半導体シリコンはコンプレッサーモーターのインバーター制御デバイスに使用され、モーターを適切な回転数に調節することで省電力に貢献することから、需要が拡大している。 |
中 |
航空機 |
レア・アースマグネットは小型航空機の電動化やハイブリッド化、大型航空機の油圧駆動部の電動化に不可欠である。小型で強力なレア・アースマグネットは機体の重量を軽減し、燃費の向上に寄与するため、需要の拡大が見込まれる。 |
中 |
産業用モーター |
レア・アースマグネットは、産業用モーターの効率を上げ、消費電力量を削減するため、需要の拡大が見込まれる。 |
中 |
サービスロボット |
半導体シリコンは、製造、物流、農業用などの省エネ対応ロボット制御モーター用半導体への使用や、医療用、災害対策用ロボットへの採用が広がっている。 |
中 |
植物由来の代替肉の結着剤 |
植物性食品を中心にした食生活は、CO2排出量を年間1.6ギガトンも削減することができる可能性がある※。セルロース誘導体の製品のひとつである「メトローズMCE-100TS」は、植物由来の代替肉の結着剤として使用されている。代替肉の世界市場は年率2ケタの成長が見込まれており、今後もさらなる市場の拡大が期待される。 |
中 |
- ※ポール・ホーケン編著「DRAWDOWN–The Most Comprehensive Plan Ever Proposed to Reverse Global Warming」より
②気候変動による事業リスクと対応策:1.5℃シナリオ(移行リスク)
事象 | 当社へのリスク | 収益への 影響度 |
対応策 |
世界各国での炭素税の導入、炭素排出枠の設定 |
炭素税の支払い |
大 |
|
温室効果ガス排出の規制強化による再生可能エネルギー由来の電力の普及と電力価格の上昇 |
電力コストの増加 |
大 |
|
③気候変動による事業リスクと対応策:4℃シナリオ(物理的リスク)
事象 | 当社へのリスク | 収益への 影響度 |
対応策 |
異常気象の発生頻度の上昇 |
生産拠点の浸水 |
大 |
生産拠点の嵩上げや重要な設備の周辺への防水壁の設置、冠水リスクが低い場所への計器室の設置、港湾に近い生産拠点での防潮堤の設置 |
降水パターンの変化などによる洪水の発生頻度の上昇 | |||
一部の国での炭素税の導入や炭素排出枠の設定 |
当該国の生産拠点から排出される温室効果ガスに課税される炭素税の支払い |
小 |
|
電力価格 |
IEAのシナリオ分析(現行施策シナリオ)によると、電力価格は上昇しない。このため、当社へのリスクはない |
ー | ー |
リスク管理
リスクマネジメント委員会が気候変動によるリスクも含め事業を取り巻くさまざまなリスクに備え、リスクを排除することに取り組んでいます。同委員会は常務執行役員が委員長を務め、信越化学の取締役や執行役員、部門長など、約20名で構成されています。 当社グループは事業活動に伴い想定されるリスクを洗い出し、それらに適切に対処するためのリスク管理規程を定めています。同規程では、具体的なリスク、リスク管理の体制、発生したリスクへの対応等を明記しています。リスク管理で重要な事項については、リスクマネジメント委員会が取締役会、常務委員会、監査役会、関係者に適時報告し、適切に対処をすべく取り組んでいます。近年重要性の高まってきた気候変動に関するリスクについては、同委員会と連携し、サステナビリティ委員会がシナリオ分析を通じて、リスクの把握を行っています。
気候変動に関するリスクとしては、CO2の排出権取引や炭素税による支出の増加、エネルギー価格の上昇による製造コストの上昇などの移行リスク、大型台風の接近による設備損傷、洪水による電気設備への浸水による被害および操業停止などの物理リスクを想定しています。
こうしたリスクのうち、例えば操業停止日数が1日以上の事故、爆発、火災事故などの重大災害、法令基準値または規制値を超過した環境汚染事故を重大なリスクと位置づけています。
指標と目標
信越化学グループは、2050年に温室効果ガス排出量(スコープ1、2)の実質ゼロを目指します。
さらに、引き続き、生産量原単位での温室効果ガス排出量の削減も推進します。2016年度に掲げた新たな中期目標「2025年度に1990年度比で温室効果ガス排出の生産量原単位を45%にする」の達成に向けて、取り組んでいきます。
長期目標
2050年にカーボンニュートラルを達成(スコープ1、2)
2022年度の実績
6,613千t-CO2(スコープ1 2,246千t-CO2、スコープ2 4,367千t-CO2)
中期目標
2025年度に1990年度比で温室効果ガス排出の生産量原単位を45%(55%削減)にする※1
2022年度の実績
信越化学グループ※2は1990年度比で 54.2%(45.8%削減)、信越化学は46.8%(53.2%削減)
温室効果ガス排出量 1990年度比 生産量原単位指数の推移
- ※1:排出量の算定にあたり、電力のCO2排出係数は電力の削減努力が明確になるよう、2000年から2009年までの平均値を使用しています。
- ※2:非連結のグループ会社を含みます。