知的財産の尊重と保護

方針

全ての知的財産を尊重するとともに、情報資産を適切に管理します。

課題の認識

信越化学グループは、自社で開発した製品や技術などの知的財産は重要な情報資産であり厳格な管理が必要と考えています。同時に、他者の知的財産を尊重することも重要と認識しています。

知的財産、営業情報、技術情報などの当社グループが保有する情報を適切に管理し、情報漏えいやサイバー攻撃への対策も細心の注意を払いながら取り組んでいます。

知的財産管理

信越化学は、「事業を守り、事業価値を高めるための有効な特許を出願・権利化し、また他社特許を侵害しない」という方針のもと知的財産基本規程を策定し、知的財産の取得、管理、活用を行っています。この規程に基づいて、「独創性」の高い有用な知的財産を取得するとともに、取得した当社の知的財産を第三者による侵害から保護しています。同時に、第三者の全ての知的財産に関する権利を尊重することも定めています。その他の具体的な活動の一つとして、テーマに関する継続的な特許のウオッチング(SDI:selective dissemination of information)に力を入れており、知的財産管理に活用しています。

信越化学の各研究所のテーマに関しては、毎月特許部の部員が各研究所を訪問もしくはウェブ会議で、各研究グループの特許担当者と主要研究者とともに特許検討会を実施し、他社特許の侵害がないかなどの調査を行っています。

また、研究員一人一人が特許出願の明細書を作ることができるように教育し、特許を念頭に置きながら研究できるような仕組みづくりに力を入れています。

さらに、業務上有益な発明、改良、工夫、考案をした従業員を、以下のような制度で表彰しています。

実績補償表彰

特許権などの形で会社に⼤きく貢献した発明や考案を⾏った従業員を表彰する制度

2023年度:28件(信越化学)

多数発明者表彰

多数の発明を⾏い、かつ、会社に多数の特許権を取得させた従業員を表彰する制度

2023年度:12件(信越化学)

TOPIC

「Clarivate Top 100 グローバル・イノベーター™」を13年連続受賞

ロゴ:Top 100 Global Innovator 2024 Clarivate TM

当社は、世界で最も革新的な企業や機関を選出する「Clarivate Top 100 グローバル・イノベーター」を、13年連続で受賞しました。

同賞は、世界的な情報サービス企業であるクラリベイト社(英国)が、保有する特許データを基に知的財産や特許動向を分析し、独創的な発明のアイデアを知的財産権によって保護し、事業化を成功させることによって、世界のビジネスをリードする企業や機関に授与されます。13年連続受賞は、国内では当社を含め9社であり、化学企業では当社だけです。

信越ポリマー社の取り組み

海外の模倣品対策として技術の秘匿化を促進

信越ポリマーは、開発のコンセプト設計または試作を終えた早い段階での特許出願を行うとともに、その後の事業の進展に応じて、優先権主張出願や分割出願など多面的な出願をすることで、権利の最大化に努めています。同時に、他社の参入を防止する周辺技術の出願を行うことで、事業の競争優位性を確保できる知的財産を保護、活用しています。

また、海外の模倣品対策として、特許のほかに意匠による保護や、国によっては有効な実用新案権を活用することもあります。公開せずにノウハウとして秘匿すべき技術については、公開前取下げのほか、定期的に部門からノウハウリストを提出してもらい、適切に秘匿化されるよう社内に促しています。これらの活動は各部門の特許担当者や発明者から提供してもらう最新かつ正しい情報が重要となるため、開発本部の知的財産部が各部門と密接にコミュニケーションをとっています。さらに、先使用権確保の手段の一つとしてタイムスタンプを導入し始めています。

一方、他者の知的財産権を侵害しないようにするため、開発テーマと製品に関係する特許公報を毎月各部門に配布し、知財部門と開発部門が注目した公報の継続的な定期調査(SDI)も行っています。また、他者の権利範囲によっては対策が必要な場合があるため、他者公報の審査請求や権利化などの事案発生時にアラートメールが配信されるよう設定しており、必要なアクションの有無を都度確認しています。

タイムスタンプ
スタンプが刻印された時点に電子データが存在していたこと、さらにそれ以降の修正や改ざんが行われていないことを証明する技術。

情報資産管理の取り組み

⽇々の業務活動や円滑なコミュニケーションのためには、情報資産の有効利⽤が⾮常に重要です。⼀⽅、情報資産の不適切な管理による情報漏えいなどが起きるリスクも増⼤しています。このため、情報を扱う当事者が情報資産の重要性を認識し、それらを適切に管理、利⽤することが求められています。また、万⼀の事態においては、他への影響や拡⼤を防⽌することで、当社グループ全体の情報セキュリティの確保に最⼤限取り組まなければなりません。

当社グループでは「情報資産管理規程」に従って情報資産の保護、活⽤、管理、運⽤を⾏っています。

さらに、「情報資産管理基準」などの関連規程で、お客さま、お取引先などに関する全ての情報の取り扱い、管理、保存期間、廃棄などの詳細を定めています。また、技術流出を防ぐため、「技術流出防⽌基準」を定めています。

なお、情報資産管理に関わる教育の実施や、情報資産管理規程などの遵守状況の定期的な確認、社内監査を⾏っています。2024年1月には弁護士を講師として招き、情報の漏えい、不正取得に関する注意点についての講演会を開催しました。当社から304名、国内グループ会社32社から1,030名、海外グループ会社29社から110名、合計で1,446名が参加し、情報の漏えい、不正取得に関し、不正競争防止法、個人情報保護法などの法令における取り扱い、最近の法改正や裁判例の紹介、当社の社内ルールとの関係などについて説明を受けました。

信越化学本社および各地区に設置した情報管理事務局が中心となり、情報資産の保存および管理状況について全社の各部門を対象とした監査で確認し、情報漏えいの防止、情報の整理と有効活用をさらに進展させるべく取り組んでいます。

個人情報保護

当社は「個人情報の保護に関する法律」に基づき、個人情報を適切に保護するため、「個人情報保護ポリシー」を制定し、ホームページで公開しています。

また、個人情報の適切な取り扱いと保護の徹底のために、法令に関する教育の実施や、階層別研修で個人情報保護に関する講義を行っています。

なお、EU域内のグループ会社では、2018年5月に施行されたEUの一般データ保護規則(GDPR)に適切に対応しています。

一般データ保護規則(GDPR)
General Data Protection Regulation。個人情報の処理、移転について定めた法律。EU加盟国にはそれぞれデータを保護する規則があったが、2018年5月から「データ保護規則」に統一された。

サイバーセキュリティ

サイバー攻撃に備えて、24時間365日対応の侵入検知サービスにより監視を強化しています。外部業者のセキュリティ診断を受け、必要なセキュリティ対策を継続して行っています。

不正アクセスによって脅威が侵入した場合も想定し、2022年12月から、信越化学および信越半導体を中心に、EDR(Endpoint Detection and Response)の24時間監視体制など多層防御の設定を推進しています。また、オフィスネットワーク(OA)と工場ネットワーク(FA)を物理的・論理的に分離し、サイバー攻撃から重要なデータや設備を保護するセキュリティ対策を強化しています。同時に、他のグループ会社のセキュリティ対策状況を調査し、信越化学と同水準の対策強化を各社に要請するとともに支援を行っています。2023年9月には、生成AI、翻訳ソフト、パスワード設定、クラウド利用などについて、デジタル活用ガイドラインを改定し、グループ会社に展開しています。

外部有識者を招いてサイバーセキュリティ講演会も実施しています。2023年は8月をサイバーセキュリティ強化月間とし、「サイバーセキュリティ対策」をテーマに事故事例、犯罪傾向を交えて利用者にもわかりやすい内容の講演会を開催しました。

サイバーセキュリティ講演会
(2023年8月 信越化学本社)

標的型メール攻撃対策システムも導入しています。侵入を防ぐ対策に限らず、攻撃を受けた際の検知、分析の対策を強化しています。また、社員のセキュリティ意識を高めるため、信越化学およびグループ会社を対象に、標的型メール攻撃訓練を毎年実施しています。最新の標的型攻撃の手法を模したメールを全員に年4回送信し、訓練終了後には全ての対象者に標的型攻撃メールの解説資料を配布し、2回以上標的型メールを開封した対象者には個別に教育を実施しています。

関連データ

項目 内訳 対象範囲 単位 2021年度 2022年度 2023年度
特許取得件数 日本 主要連結生産会社 606 601 656
海外合計 主要連結生産会社 1,351 1,113 1,325
アジア・オセアニア 主要連結生産会社 768 672 773
北米 主要連結生産会社 205 189 189
欧州 主要連結生産会社 374 246 359
その他 主要連結生産会社 4 4 4
合計 主要連結生産会社 1,957 1,714 1,981
特許保有件数 日本 主要連結生産会社 7,535 7,730 7,921
海外合計 主要連結生産会社 14,102 14,580 15,145
アジア・オセアニア 主要連結生産会社 6,633 7,028 7,479
北米 主要連結生産会社 3,203 3,206 3,225
欧州 主要連結生産会社 4,197 4,278 4,381
その他 主要連結生産会社 69 68 60
合計 主要連結生産会社 21,637 22,310 23,066