信越化学グループは、高い付加価値を生み出し続けるために、ある業務や領域の専門家であるとともに、その他の分野でも活躍できる幅広い仕事力を有する「T字型人材」の育成に注力しています。この考え方のもと、OJT(On the Job Training)を人材育成の基軸に据え、従業員の適性と職業人として目指す姿を尊重した人材の配置を行い、一人一人が担当する仕事で真の専門家になることを支援しています。
成長段階に応じた研修や学習機会を組み合わせ、専門性と実践力を高める育成体系を整備しています。階層別研修を通じて、各階層に求められるマネジメント力やリーダーシップ、課題解決力などの強化を図るとともに、海外売上比率が高い事業構造を踏まえ、円滑な業務遂行に必要な国際コミュニケーション力の向上も推進しています。
T字型人材の育成
当社が目指すのは、高い専門性を軸にしながら、周辺領域でも力を発揮できる「T字型人材」の育成です。これは、製造や研究開発、営業、管理などそれぞれの職種において、担当業務を深く理解し、確かな成果を出せることに加え、関連部署や周辺分野の知識も身につけ、全体最適の視点で仕事を進められる人材を指します。
当社の事業は、品質や技術、安定供給が強みである一方、世界市場の変化が速く、お客さまから求められる水準も年々高度化しています。こうした環境の下で、一人一人が「自分の専門」を磨き抜きながら、他部門との連携や課題解決にも主体的に関われることが、競争力の源泉になります。
そのために当社では、画一的な配置転換ではなく、本人の適性や目指す姿を尊重しつつ、担当業務を継続的に深掘りできる環境を整えています。合わせて、階層別研修や国際化対応研修、AI研修やMI※研修などを通じて、専門性を支える土台や視野を広げる学びを重ね、「深さ」と「広がり」を両立する成長を後押しします。
※MI
Materials Informatics。材料の組成、構造、プロセス条件などのデータを、統計や機械学習で分析し、物性や性能を最適化して材料開発を効率化する研究分野。
OJTを基軸とした人材育成サイクル
当社ではT字型人材を育成するために、日々の仕事を通じて力を高めるOJT(On the Job Training)を基軸としています。現場で実際の課題に向き合い、経験を積み重ねることが、専門性の定着と実践力の向上につながると考えているためです。従業員の適性と職業人として目指す姿を尊重した人材の配置を行い、一人一人が担当する仕事で真の専門家になることを支援しています。
このOJTを実効性あるものにするために、当社では、育成を「経験させる」だけで終わらせず、目標設定から振り返り、次の成長につなげるサイクルとして回しています。
教育・研修、自己啓発
信越化学グループでは、OJTを補完する仕組みとして、成長の段階に応じたさまざまな研修プログラムを提供し、従業員の成長を支援しています。階層別研修、国際化対応研修、大学聴講生派遣制度、AI研修、MI研修など、成長段階や職務に応じた学びの機会を用意しています。こうした研修は、現場で得た気づきや課題意識を整理し、知識や技能を体系立てて身につけ直す機会として位置付けています。
このように当社は、OJTを核に、評価・面談・研修を組み合わせることで、従業員一人一人の成長を継続的に支え、結果として組織全体の力を高めていきます。
階層別研修
階層ごとに求められる、業績向上に必要不可欠なマネジメント力、リーダーシップ、コミュニケーション力、課題解決力などを学ぶため、階層別研修を行っています。
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部長層研修(アドバンストマネジメント研修、S職群・M職群研修)
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課長層研修(ミドルマネジメント研修)
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係長層研修(ラインマネジメント研修、スタッフマネジメント研修)
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一般社員研修(中堅層研修、女性社員研修、ジュニアリーダー研修、入社3年目研修)
国際化対応研修
当社グループの取引先は世界に広がり、現在の連結売上の約8割は海外売上です。そのため、円滑な業務遂行のためには外国語でのコミュニケーション能力が必要不可欠となっています。そこで、当社では、以下のような研修を行っています。
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英語研修(ミーティングスキルコース、プレゼンテーションスキルコース)
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異文化間コミュニケーション研修
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中国語会話教室
AI研修
AIを使いこなせる人材を発掘、育成し、社内全体のレベルアップを図るために、以下のようなAI研修を行っています。新たに、生成AIリテラシー講座(eラーニング)をカリキュラムに組入れ、2025年度の受講者は669名でした。2021年度からの5年間で延べ1663名の従業員が受講しました。
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新入社員教育:新入社員、若手社員を対象にしたeラーニング
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AI研修
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1)
基礎研修:Pythonによるプログラミングなどの習得
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2)
PBL(Problem Based Learning):中堅社員を対象に課題解決型学習により実務課題の解決手法を学ぶ(5ヵ月間)
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DXマネジメント研修:プロジェクトに係る部課長を対象にしたeラーニング
MI研修
機械学習を駆使して材料探索できる人材を育成し、研究開発期間の短縮を図るために、以下のような研修を実施しています。2025年度は99名、2021年度からの5年間で延べ269名の従業員が受講しました。
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MI実習:研究所の研究員を主な対象とした実習。当社の独自資料に基づき実施。受講者の習熟度により3つのコースを準備(初級、中級、上級)
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AI実習:研究所の研究員を主な対象とした実習。外部講師を招聘し、当社の独自資料も合わせて実施。用途に合わせて2つのコースを準備(画像解析、時系列解析)
大学聴講生派遣制度
信越化学は、1962年に大学聴講生派遣制度を設けました。この制度は、現場力の向上を目的として、当社グループの生産現場のオペレーターなどを毎年数名から10名程度を選抜し、1年間現場を離れて実施される、いわば国内留学の研修プログラムです。研修期間では、大学の授業を聴講して専門的知識を学ぶだけではなく、日常業務ではあまり関わることができない他事業や他工場、本社各組織の人々とのつながりを持つことを大切にしています。発足以来64年間で延べ562名の従業員が同制度を修了し、修了者の多くが各職場の中心的存在として活躍しています。
研修制度一覧
※1Materials Informatics
※2Problem-based Learning
さらなる生産性向上に向けて
従業員エンゲージメント/インクルージョンの把握と改善
当社は、従業員一人一人が安心して力を発揮し、挑戦し続けられる職場づくりが、生産性向上の基盤であると考えています。そのため、組織の状態を継続的に把握し、課題を早期に捉えて改善につなげる仕組みとして、全従業員を対象とした調査を定期的に実施しています。
調査結果は、単に集計するだけでなく、職場や組織単位での組織分析や要因分析を行い、エンゲージメントやインクルージョンに関わる状態(働きがい、組織の一体感、上司や同僚との関係、働きやすさなど)を多面的に確認しています。こうした分析を通じて見えてきた課題については、職場の実態に即した形で施策に落とし込み、運用や仕組みの見直しにもつなげています。
また、改善は会社主導の一方向の施策にとどめず、各職場で課題認識を共有し、現場に近い視点で取り組みを進めることを重視しています。各職場が主体となって改善策を検討、実行し、その効果を確認しながら、ボトムアップでPDCAサイクルを回して継続的な改善を進めています。今後も、こうした仕組みを通じて、従業員が力を発揮できる環境づくりを継続し、さらなる生産性向上につなげていきます。
人事考課制度の改定
当社は、従業員が高い目標に挑戦し、その成果と姿勢が処遇に反映されることによる意欲の向上は生産性向上につながると考え、能力成果主義による人事考課制度を運用しています。従業員は期の初めに意欲的な業務目標と改善目標を定め、その目標に挑戦することで成長を促しています。部下が目標を達成するために、上司は助言と指導を行っています。期末には目標に対する達成度を評価するとともに、能力、成長の可能性、仕事に取り組む姿勢も考慮し、従業員の意欲を高め成長につながる取り組みをしています。また、公正で透明性の高い評価を実現するため、考課者訓練の実施や評価基準の周知、上司と部下の面談(コミュニケーションシートの活用)などを通じて、評価の納得性の向上に取り組んでいます。
一方、組織の状態を把握する取り組みなどを踏まえ、当社は今後の課題の一つとして、人事考課に対する納得性について、さらなる向上や改善余地があることを認識しています。評価に対する納得感は、従業員のモチベーションや挑戦意欲、ひいては組織の活力に影響し、結果として生産性にも関わる重要な要素です。
このため当社は、従業員が評価のプロセスや判断をより理解しやすく、腹落ちできる状態を目指し、納得性と公正性を一層高めるための人事考課制度の改定に向けて、労働組合と協議、検討を進めています。具体的には、評価基準の明確化と浸透、上司と部下の対話の質の向上、フィードバックの充実、運用面でのばらつきの抑制などを通じて、評価への信頼を高めていきます。
こうした取り組みにより、従業員の成長実感と挑戦意欲を高め、組織としての活力を引き出すことで、さらなる生産性向上につなげていきます。
関連情報
※「人材育成」での信越化学グループの対象は、信越化学の従業員と出向者です。
