シンテック社は、信越化学グループの米国子会社として、テキサス州およびルイジアナ州を拠点に事業を展開する、世界最大の塩化ビニル樹脂(PVC)メーカーです。原料であるエチレンや塩素から、塩化ビニルモノマー(VCM)、塩化ビニル樹脂に至るまでの一貫生産体制を確立し、安定供給、品質、コストの全ての面で高い競争力を発揮しています。
同時にシンテック社は、「環境」「健康」「安全」をサステナビリティの根幹に据え、地域社会と調和した責任ある事業活動を推進しています。
シンテック社の企業活動は、信越化学グループ共通の企業規範である「持続可能な企業活動を積極的に行い、他の追随できない素材技術によって社会と産業の求める価値を生み出す」という理念を基盤としています。特にサステナビリティ活動においては、環境保全および労働安全衛生を最重要課題と位置付け、環境安全衛生部門が毎年設定する目標を、連邦規則集に従って達成するよう取り組んでいます。全ての施設において最高水準のパフォーマンスを継続的に達成するために、安全運転委員会および業務改善委員会を毎月開催し進捗を確認しています。また、各設備の環境および労働安全の遵守状況を週次で監査するほか、毎年、米国大気浄化法タイトルVに基づく年次法令遵守証明書(Title V Annual Compliance Certification)を提出し、継続的な改善を図っています。
シンテック社は、地域社会の環境を守ることを重要な責務と捉え、法令および許認可要件の遵守を前提に、汚染防止、廃棄物の最小化、環境管理システムの継続的改善に取り組んでいます。
具体的な取り組みの一つが、有害大気汚染物質に関する国家排出基準(NESHAP)への対応です。液体廃棄物から塩ビの原料となる塩素を回収するプロセスを導入することで、生産量を維持しながら汚染物質の排出を抑制するとともに、エネルギーおよび原料の使用量の削減、設備全体の運転効率の向上を実現しています。
また、VOC(揮発性有機化合物)やHAP(有害大気汚染物質)の漏えいを早期に検知するために、排出制御装置の連続監視、LDAR管理※1、ガスクロマトグラフによる監視、オペレーターによる巡回点検を組み合わせた多層的な監視体制を構築しています。
プラケマイン工場のエチレンプラントでは、MACT規制※2への対応として2022年にフレアガス※3監視システムを導入しました。この監視システムにより、シンテック社は規制要件を遵守していることが記録され、システムが稼働開始以降、規制違反は1件も発生していません。さらに、加熱炉からのNOx排出を低減する選択触媒還元システムの触媒を交換することにより、NOxの除去性能も向上させています。
2024年に稼働を開始した塩ビ製造工場では、超低NOxバーナー、粒子状物質(PM)の排出を低減する排ガス処理装置のほか、高効率冷却システムや乾燥機の蒸気を低減する高効率遠心分離機などを採用し、環境負荷の低減とエネルギー効率の向上を両立しています。
加えて、日次報告書による遵守状況の確認、定期的な環境研修、現場参加型の監査を通じて、全従業員が環境要件の重要性を理解し、日常業務の中で継続的な環境負荷の低減活動を実践しています。
※1LDAR管理
常勤の漏えい検知、修理業者による管理。
※2MACT規制
Maximum Achievable Control Technology standards。米国の大気浄化法(CAA)に基づき、HAPを排出する産業施設に対して課される規制基準。
※3フレアガス
石油や天然ガスの採掘、製油所、化学プラントで、処理・利用できない不要な可燃性ガスを安全のために焼却処分する際に発生するガス。
シンテック社において、安全と法令遵守は特別な取り組みではなく、全ての業務に共通する前提条件です。危険の認識と理解、危険の共有、そして危険の排除、低減を重視し、安全文化の醸成に取り組んでいます。
製造現場では、日常的な安全パトロール、KY(危険予知)活動、ヒヤリハット報告、作業手順書の定期的な見直しといった活動が連携して効果を高め、事故防止に寄与しています。監査や検査の結果は迅速かつ分かりやすく共有され、全従業員が高い安全意識を維持できる仕組みが整えられています。
安全管理の教育、訓練も充実させています。新入社員に対しては、非常に詳細な安全オリエンテーションを実施しています。その後も年1回および方針や手順に変更があった際には研修を行い、継続的な教育、訓練を通じて安全意識の定着を図っています。さらに、定期的な監査や点検によって従業員の理解が深まると同時に、結果を効果的かつ迅速に共有することで、全員が常に状況を把握できるようにしています。
また、シンテック社には、現地に常駐する緊急対応チームが配置されています。緊急対応チームは、消防活動、救助活動、危険物対応、救急医療サービス、ならびに緊急事態発生時の現場対応といった幅広い活動をしています。緊急対応チームの従業員は、初期研修および各種認定の取得に加え、継続的な教育、訓練を修了することが求められています。
シンテック社は、米国のVinyl Institute※のサステナビリティ協議会に加盟し、環境および安全の両面で高い評価を受けています。同協会は毎年、環境保護や労働者安全の向上に顕著な成果を上げた加盟企業を表彰しており、シンテック社はEPA(米国環境保護庁)やOSHA(労働安全衛生局)の厳格な基準を満たしていることが評価されています。
環境面では、2025年にアディス工場がPVC MACT規制に関連したパフォーマンスにおいて、ビニール協会の環境優秀賞を6年連続で受賞しました。安全衛生面では、2025年にプラケマイン工場のPVCプラントが12年連続で重大事故ゼロを達成し、安全優秀賞を受賞しました。VCMプラントも2024年度の労働災害発生件数が0件であったことを評価され、安全栄誉賞を受賞しました。これらの外部評価は、日々の取り組みと現場主導の改善の積み重ねが認められた証です。
※Vinyl Institute
1982年に設立された、塩化ビニルメーカー、塩化ビニルモノマー(VCM)、添加剤、修飾剤を代表する米国の業界団体。
シンテック社は、法令や許認可のルールの遵守を前提に、さまざまな方法で監視や点検を行い、設備や作業の手順を改善しながら、環境負荷低減の取り組みを続けています。また、「安全は仕事の質に直結する」という考えのもと、設備の設計や保全の段階から安全を最優先し、現状に満足することなく改善を重ねる姿勢を全社で共有しています。今後も、全ての施設で環境パフォーマンスのさらなる向上を追求すること、無事故を達成することを目標に、継続的な業務改善とリスク低減に取り組み、従業員および地域社会から信頼される企業であり続けることを目指します。
