2050年カーボンニュートラル達成策
信越化学グループは、「2050年カーボンニュートラル」に向け、2023年に、温室効果ガス排出量(スコープ1、スコープ2)を実質ゼロとするための計画を策定し公表しました。一方、中間目標としては、2016年に策定した「2025年度に1990年度比で温室効果ガス排出の生産量原単位を45%(55%削減)にする」を継続し、生産量原単位を極限まで高めることに取り組んできました。
2025年度はこの中間目標の最終年度であるため、新たな中間目標を下記のとおり定めました。同時に2050年カーボンニュートラルに向けた実行計画も公表後約3年が経過したことから、グループ全体で見直しました。
新中間目標
2025年を基準年として、
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1.2035年までに、温室効果ガス排出量を生産量原単位で30%削減
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2.2040年までに、温室効果ガス排出量を35%削減
二つの目標を定めた理由
当社は1単位の製品を作るのに必要なエネルギーと原料の原単位を向上させること、すなわち、エネルギーと原料を徹底的に有効に無駄なく使うことで、温室効果ガスの排出削減に取り組んできました。この方針は今後も継続し、それぞれの事業において業界の中で最も効率の良い生産を追求していきます。生産量原単位の削減は自助努力で出来る部分が多いため、中間目標を2035年と定めました。
一方、温室効果ガス排出量の削減のためには、「電力における排出量の低減」、「燃料転換」、「CO2回収とCO2資源化」が必要です。これらの対策は、個社の取り組みのみでの実現は難しく、国の主導や関係する業界が連携して取り組むことではじめて実現できるものと考えます。インフラストラクチャーをはじめとした整備には時間を要するため、中間目標を2040年と定めました。
カーボンニュートラルに向けた取り組み
当社のKPIは期毎の増収増益です。そのために、各事業で事業の拡大に向け需要の伸びを捉えた拡販、それを可能とする生産能力の増強を実施してきました。これらの生産能力の増強投資では、常に最新鋭の技術を導入し、生産性とエネルギー効率を極限まで高めることが当社の方針です。
その代表例が、塩化ビニル樹脂の製造工場の新増設を続けているシンテック社(米国)です。塩化ビニル樹脂の世界の需要は過去10年間で約20%増加し、今後も住宅やインフラストラクチャー向けを中心とした堅調な需要の伸びが見込まれています。塩ビの最終製品は断熱性と耐久性に優れているため、製品として温室効果ガスの排出削減に貢献しています。一方、現時点で生産性、環境負荷、安全性、経済性の観点で実用可能な塩ビの製造技術では、生産量原単位を高めることは可能ですが、温室効果ガス排出量をゼロにすることはできません。
シンテック社は増加を続ける世界の塩ビ需要を着実に捉えることで事業を拡大し、大型の設備増強を積み重ねてきました。現在、カーバイド法のような旧式の技術で生産される塩ビは、世界全体の3割から4割を占めています。この旧式の技術は、シンテック社の最新鋭の技術と比較して5倍を超えるCO2を排出しています。シンテック社が最新鋭の技術で拡大を続ける塩ビの需要を捉えていることは、世界全体のCO2の排出削減に寄与しています。
カーボンニュートラルに向けた現時点の取り組み
A:実施・拡大中、B:初期段階・一部導入、C:研究・調査段階
| 取り組みの内容 | 取組状況 | |
|---|---|---|
| 電力における排出量低減 | ① 水力発電による電力の購入 | A |
| ② 太陽光発電設備の設置 | B | |
| ③ 低炭素電力の購入 | B | |
| ④ 電力会社によるカーボンニュートラル化 | 国と電力会社 | |
| 燃料転換 | ⑤ 天然ガス燃料への転換 | A |
| ⑥ カーボンニュートラル天然ガスの活用 | C | |
| ⑦ グリーン水素・ブルー水素の活用 | C | |
| ⑧ バイオマス燃料の活用 | B | |
| ⑨ アンモニアの活用 | C | |
| 徹底した合理化、効率化の継続 | ⑩ 生産性の向上(連続操業化) | A |
| ⑪ 反応効率の向上 | A | |
| ⑫ ヒートポンプの活用 | A | |
| ⑬ 原料生産の熱回収 | A | |
| ⑭ エネルギー効率の高い設備の導入 | A | |
| ⑮ 木炭還元剤の利用増 | A | |
| ⑯ 新しい製法への転換 | B | |
| CO2回収とCO2資源化 | ⑰ CO2分離回収設備の導入と資源化 | C |
| リサイクルの推進 | ⑱ 塩ビ製品 | A |
| ⑲ レア・アースマグネット | A | |
| ⑳ それ以外の製品 | B | |
| その他 | ㉑ 植林 | A |
| ㉒ カーボンオフセット | C | |
| ㉓ その他の新技術 | C | |
2050年カーボンニュートラルに向けたロードマップ
※12025年度を基準年としますが、数値は確定値ではありません
当社グループの削減策
当社が想定している2050年に向けた削減策の構成比は、下記のとおりです。今後の技術革新に応じて、最適な削減手段を選択していきます。
タイで再生可能エネルギーを導入し、温室効果ガス排出量を削減
シンエツ シリコーンズ タイランド社、アジア シリコーンズ モノマー社、シンエツ ニュー マテリアルズ タイランド社の3社は、日鉄エンジニアリング株式会社と大阪ガス株式会社が共同出資するNS-OG Energy Solutions社(以下NSET社)から、バイオマスコージェネレーションシステムによる再生可能エネルギーを受給することになりました。2027年の受給開始を目指し、取り組みを進めます。
NSET社による再生可能エネルギー供給事業は、環境省の令和6年度「二国間クレジット制度(Joint Crediting Mechanism: JCM)資金支援事業のうち設備補助事業」※2に採択された取り組みです。NSET社が、シンエツ シリコーンズ タイランド社の敷地内に本設備を設置、操業管理し、タイ国内で産出された木質チップを燃料にして製造した再生可能エネルギー(電力・蒸気)の全てを、これらの3社向けに供給します。
この取り組みを通じて新たに調達したエネルギーは、3社で使用するエネルギーの一部を賄うことになります。この取り組みにより、3社合計の温室効果ガス排出量は年間で約4.8万t-CO2の削減となる見込みです。
※2二国間クレジット制度(Joint
Crediting Mechanism: JCM)資金支援事業のうち設備補助事業
優れた脱炭素技術などを活用し、途上国などにおける温室効果ガス排出量を削減する事業を実施し、測定、報告、検証を行う事業。途上国などにおける温室効果ガスの削減とともに、JCMを通じて日本およびパートナー国の温室効果ガスの排出削減目標の達成に資することを目的とする。優れた脱炭素技術などに対する初期投資費用の2分の1を上限として補助を行う。なお、本事業はタイ国政府と日本政府の協力の下で実施されている。
本事業のスキームのイメージ
「地産地消型PPA(群馬モデル)」への参加
電力における排出量の低減に向けた取り組みとして、信越化学は2024年3月、群馬県が提供する「地産地消型PPA※3(以下、群馬モデル)」への参加を決定しました。
群馬モデルは、群馬県営水力発電所の電気を群馬県内事業者へ提供する新たな制度です。水力発電により生み出される電力は、温室効果ガスを排出しないグリーンな電力となります。同制度を通じて新たに調達する電力は、信越化学群馬事業所横野平分工場で使用する電力の全てを賄い、同分工場における温室効果ガス排出量を約90%削減できるようになります。
※3PPA
「Power Purchase
Agreement」の略。電力使用者が発電事業者から一定期間、単価を固定して電力を購入する契約形態。
群馬県内の水力発電所

群馬版PPAモデル(群馬県提供資料を元に作成)
コージェネレーションシステムの導入
信越化学の群馬事業所と直江津工場では、天然ガスを使用したコージェネレーションシステム※4を導入し、蒸気と電力を作り、製造設備の稼働を支えています。群馬事業所は2022年11月、温室効果ガス排出量削減に向けて磯部工場に2基、松井田工場に1基のガスタービン発電設備を増強しました。
これらのコージェネレーションシステムは、コージェネ財団主催の「コージェネ大賞2023」で、最高位の「産業用部門 理事長賞」を受賞しました。磯部工場および松井田工場は、これらのコージェネレーションシステムの導入により電力の自給率が将来的に100%になり、CO2排出量を年間約24,000t-CO2削減することが可能になりました。
※4コージェネレーションシステム(熱電供給)
天然ガスや石油、液化石油ガスなどを燃料として、エンジンやタービン、燃料電池などの方法で発電し、その際に生じる熱をスチームとして同時に回収するシステム。電力と廃熱の両方を有効利用することでCO2排出量の削減、省エネルギーによる経済性向上ができる。
カーボンニュートラル社会の実現に貢献するためのその他の取り組み
ライフサイクルアセスメント実施のための取り組み
当社グループは、ライフサイクルアセスメントを実施することで、サプライチェーン全体での温室効果ガスの削減に貢献していきます。
物流における温室効果ガス排出量の削減
製品輸送時に排出される温室効果ガスの削減に取り組んでいます。この取り組みは、温室効果ガスのスコープ3排出量の削減に寄与します。
| 削減例 | 削減に寄与しているスコープ3排出量のカテゴリー |
|---|---|
| メタノール輸送におけるモーダルシフト※1 (タンクローリー→鉄道) |
カテゴリー4「製品の輸送時による排出」 |
| シリコンウエハー輸送におけるモーダルシフト (航空機→船舶) |
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| シリコーン製品輸送におけるモーダルシフト (トラック→鉄道) |
※1モーダルシフト
トラックなどによる貨物輸送を、環境負荷の小さい鉄道や船舶に転換すること。
温室効果ガス排出量の削減に貢献する製品の製造販売の拡大
当社グループの製品は住宅やインフラストラクチャー、電気自動車、DX、GXをはじめとした幅広い分野に利用され、生活や産業の基盤を支えています。これらの製品の多くは、温室効果ガスの削減にも寄与しています。2021年6月に日本政府が2050年カーボンニュートラルを目指す上で不可欠な14の分野を掲げましたが、当社グループの2024年度の連結売上高に占める当該14分野への売上比率は約7割に上ります。今後とも、こうした製品の開発、製造、販売の拡大に注力することで、社会全体のカーボンニュートラルに貢献していきます。
成長が期待される14分野
| 成長が期待される14分野※2 | グリーン成長戦略で挙げられている製品や技術 | グリーン成長戦略に貢献する信越化学グループ製品や技術※3 |
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①洋上風力・太陽光・地熱産業 |
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②水素・燃料アンモニア産業 |
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③次世代熱エネルギー産業 |
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④原子力産業 |
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⑤自動車・蓄電池産業 |
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⑥半導体・情報通信産業 |
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⑦船舶産業 |
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⑧物流・人流・土木インフラ産業 |
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⑨食料・農林水産業 |
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⑩航空機産業 |
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⑪カーボンリサイクル・マテリアル産業 |
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⑫住宅・建築物産業・次世代電力マネジメント産業 |
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⑬資源循環関連産業 |
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⑭ライフスタイル関連産業 |
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※2出典:「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」(2021年6月 日本政府発表)
※3将来の製品も含みます。また、製品や技術の文字の色は事業セグメントを表しています。
- 生活環境基盤材料
- 電子材料
- 機能材料
- 加工・商事・技術サービス
※4半導体材料は、シリコンウエハー、フォトレジスト、マスクブランクス、ペリクル、合成石英ガラス基板、窒化ガリウムエピタキシャル用基板、高純度シランなどを指します。半導体材料は分野⑥の半導体産業に該当しますが、半導体材料を使用して製造された半導体はさまざまな分野の制御システムなどに貢献するため、⑥以外の分野にも記載しました。
