ガバナンス:コーポレートガバナンス

基本的な考え方

当社の経営の基本方針は、企業価値を継続して高め、株主の皆さまのご期待にお応えしていくことです。この方針を実現するために、事業環境の変化に対応できる効率的な組織体制や諸制度を整備するとともに、経営における透明性の向上や監視機能の強化という観点から、株主や投資家の皆さまへの的確な情報開示に取り組むことが、当社のコーポレートガバナンスに関する基本的な考え方であり、経営上の最重要課題の一つとして位置付けています。

企業統治の体制

当社の取締役会は取締役9名で構成され、そのうち5名は豊富な企業・組織運営の経験や卓越した識見を有する社外取締役です。

当社は、法定の取締役会のほかに業務執行の主な審議・決定機関として、常務委員会を設置し、それぞれ原則として毎月1回開催しています。取締役会では、会社の基本方針の決定や法令および定款により決議を必要とする事項をはじめ、経営に関する重要事項などを議題として、審議および決議を行っています。常務委員会では業務全般についての審議および決定(取締役会付議事項を除く)を行っています。加えて、取締役会の諮問機関として社外取締役を委員長とする役員報酬委員会を設置し、役員報酬の審査および評価や取締役・監査役候補者の指名などに係る透明性と妥当性を確保しています。

当社は監査役制度を採用しています。監査役会は、社外監査役3名を含む5名の監査役で構成されています。監査役は取締役会、常務委員会などの重要な社内会議に出席するほか、取締役、執行役員、使用人等からの職務の執行状況についての報告、事業所および子会社の往査その他の調査などを通じて取締役の業務執行を監査しています。また四半期ごとに会計監査人から会計監査に関する報告、説明を受け、意見交換を行うとともに、随時の情報交換や意見交換も行い、連携を図っています。さらに、定期的に内部監査部門から内部監査の状況に関する報告、説明を受け、意見交換を行い、連携を図っています。

信越化学のコーポレートガバナンス体制図

図:信越化学のコーポレートガバナンス体制図。株主総会、取締役会、役員報酬委員会、代表取締役、常務委員会、執行役員、重要な経営課題ごとの委員会、営業・製造・研究・管理 各部門。監査役会、会計監査人、業務監査部。

2025年6月27日現在

役員報酬

役員報酬委員会

役員の報酬の審査および評価や、経営陣幹部、取締役、監査役候補者の指名などに関わる過程での透明性と妥当性を確保するために、役員報酬委員会を設置しています。同委員会は独立社外取締役の小宮山 宏を委員長とし、その他の独立社外取締役2名(中村邦晴、マイケル・マクギャリー)および代表取締役社長斉藤恭彦の取締役4名で構成され、事業年度ごとの業績および経営全般への各取締役の貢献度を総合的に審査し、評価した結果を取締役会に答申します。

報酬額またはその算定方法に関わる基本方針

当社の取締役の報酬は、中長期的な企業価値の向上に資する報酬体系とし、役員報酬委員会の審査・評価を踏まえ、その答申に基づき取締役会で決定されます。その内容は、役職、職責などに応じた「固定報酬」と、企業価値向上のためのインセンティブとして年次業績を勘案した「業績連動報酬」のほか、職務遂行および業績向上に対する意欲や士気を高め、株主価値向上に資するインセンティブ(株価連動報酬)としての「ストックオプション」です。

一方、監査役の報酬は、監査役の協議により決定されます。その内容は、監査役としての職責に応じた「固定報酬」です。なお、経営に対する監督・けん制機能が期待される社外取締役および監査役には、「業績連動報酬」の支給および「ストックオプション」の付与はしていません。

役員区分ごとの報酬等の総額、報酬等の種類別の総額および対象となる役員の員数(2025年3月期)
役員区分 報酬等の種類(百万円) 対象となる役員の員数(人) 報酬等の種類(百万円) 対象となる役員の員数(人)
固定報酬 業績連動報酬 非金銭報酬等
取締役
(社外取締役を除く)
468 299 767 4 196 4
監査役
(社外監査役を除く)
19 19 1
社外役員 181 181 9
(注)

1上記には、2024年6月27日開催の第147回定時株主総会終結の時をもって退任した取締役1名を含んでいます。

2当社は、2008年6月27日開催の第131回定時株主総会終結の時をもって役員退職慰労金制度を廃止しました。

3非金銭報酬等はストックオプションであり、会計基準に従い、当事業年度において費用計上した金額です。
従って、金銭として支給された報酬等ではなく、また、金銭の支給が保証された報酬等でもありません。

4取締役(社外取締役を除く)への「固定報酬」、「業績連動報酬」の計に「非金銭報酬等」を加えた報酬等の総額は964百万円です。

取締役会実効性評価

当社の取締役会においては、毎回、社外取締役から議案に関する質問や提言がなされ、活発な意見交換と討議が行われています。また、取締役会全体の実効性について社外取締役から毎年、個別に意見を聴取しており、2024年度において、当社取締役会は実効性が確保されているとの評価を受けました。聴取の際に社外取締役からは「取締役会における活発な議論を進めるための事前説明(および資料の充実)」、「社外役員による拠点視察の実施」などに関する貴重な意見を得ることができています。

政策保有株式に関する方針

当社は、安定的な取引関係の維持と強化を図ることが当社の持続的成長に基づく企業価値の向上に資すると認められる相手先について、事業戦略上の重要性に鑑み、必要に応じて、当該相手先の株式を保有することがあります。保有の合理性等の検証については、取締役会において、少なくとも毎年1回、個別の政策保有株式について取引関係の維持強化と当該株式の保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているかを勘案した上で、中長期的な経済合理性を検証しています。

保有の合理性が希薄になったと判断した銘柄については、順次売却を行い政策保有株式の縮減を進めています。2018年3月末時点で86銘柄あった政策保有株式は、2025年3月末時点で41銘柄となりました。

保有株式に関し、当社は、当社の持続的成長に基づく企業価値の向上という株式保有の目的および投資先の企業価値向上に資するかどうかという観点から、個々の議案ごとに株主価値の毀損につながるものではないか等を検討の上、総合的判断により議決権を行使しています。

政策保有株式の銘柄数の推移 (各年3月末)

図:政策保有株式の銘柄数の推移。2018年86銘柄、2025年41銘柄。

政策保有株式の銘柄数は、企業内容等の開示に関する内閣府令における特定投資株式とみなし保有株式の合計数を記載しております。

内部統制システム・業務監査

当社は会社法および法務省令で定める「取締役の職務の執行が法令および定款に適合することを確保するための体制、その他株式会社の業務並びに当該株式会社およびその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するための体制」を整備するため、「内部統制基本方針」を定めており、この方針に従って、内部統制システムを構築し運用しています。また、適時その見直しを行い、より適切で効率的な内部統制システムの整備に努めています。

内部監査は、専任部署である業務監査部が業務活動の適法性や合理性の観点から各部門の業務監査を実施するほか、財務報告に係る内部統制の整備・運用の状況について独立した立場から評価を行い、それらの結果については、代表取締役を含む取締役並びに監査役などに直接報告を行っています。また、金融商品取引法に基づく財務報告に係る内部統制報告制度(J-SOX)の対象外となっているグループ会社にも業務状況監査を実施し、各社の業務が適切な内部統制の下に行われていることを確認しています。

情報開示

信越化学グループは、適時、的確な会社情報の開⽰がステークホルダーの皆さまの理解の促進や適正な市場評価につながると考えています。

情報開示体制

当社グループは、⾦融商品取引法や証券取引所が定める情報開⽰に関する規則にのっとって、法定開示ならびに重要な会社情報の開示を行っています。会社情報の把握、管理および適時開⽰に関して、証券取引所の情報開示規則に基づき、「会社情報の適時開⽰に関する規程」および「内部者取引の規制等に関する規程」などの社内規程を定めています。これらの規程を当社の各部署およびグループ各社に周知し、円滑な適時開⽰に努めています。

また、重要な会社情報以外の情報についても、当社ホームページへの情報の掲載、報道機関を通じた公表、統合報告書や決算短信などで、積極的に任意開⽰を⾏っています。

会社情報の適時開⽰に関わる社内体制の状況

図:会社情報の適時開⽰に関わる社内体制の状況。[会社情報の収集・管理]信越化学・グループ会社→報告→社長室→連絡→[会社情報の適時開示]広報部・取締役・監査役または取締役会・関係部門→連絡→経理部・情報取扱責任者→適時開示

株主・投資家とのコミュニケーションの充実

当社は、株主との建設的な対話が持続的な成長と企業価値の向上につながると認識し、株主や投資家との対話を通じたコミュニケーションの充実に努めています。対話を通じて得た株主や投資家の皆さまのご意見は、適宜、経営陣および関係部門に報告し、経営に反映させています。

沈黙期間の設定

公平かつ透明性のある情報開示に努め、また決算情報に関する対話を控える「沈黙期間(四半期ごとの決算期日の翌日から決算発表日まで)」を設定し、この期間は決算に関するお問い合わせなどへの回答や取材対応は行っておらず、インサイダー情報の漏えい防止を徹底しています。

納税および税務への取り組みに関する方針

当社グループはサステナビリティの基本方針で、遵法に徹して企業活動を行うことを掲げています。この考えのもと、当社グループで働く一人一人が誠実に日々の仕事に取り組んでいます。その結果得た利益を、事業活動を行う国、地域の法令に従って適正に納税することは、企業としての社会的責務であり、貢献の一つと考えています。

そのための取り組みとして、税務コンプライアンス意識の浸透および向上に努め、特に税務担当者など税務に関係する従業員に対して教育を実施し、税務知識や実務能力の向上を図っています。重要な税務問題については、専門家に適宜助言を受けながら税務処理の適正性を検討し、各国の法令に基づく適切な税務申告に努めています。また、各国の税務当局に対して誠実な対応を行い、良好な関係を保つことも重視しています。なお、租税回避を目的とした事業活動は行っていません。2024年度の連結会社全体で納税した法人所得税の納税額は1,870億円でした。その地域別内訳は、日本1,270億円、米国479億円、欧州45億円、アジアオセアニア74億円です。

グループ会社の運営

当社はグループ会社の自主性を尊重し、支援することで、グループ全体の発展を目指しています。

グループ会社は、「信越化学グループ会社運営規程」に基づいて運営されています。連結子会社99社については、以下の案件について当社に事前協議や報告を行っています。

  1. 事前協議事項の例
    増減資、合併、解散、定款変更
    新規事業や設備投資の計画
    事業の譲渡や譲受
    役員や出向幹部の任免、異動
  2. 報告事項の例
    業務概況
    決算
    グループが認識したリスク情報
    内部統制の不備などに関する重要情報

また、主要なグループ会社の社長が出席する会議を年1回以上開催するなど、グループ会社間の情報の共有や交換も積極的に行っています。