気候変動:製品を通じた取り組み

信越化学グループのさまざまな製品は、使⽤段階での温室効果ガス排出量の削減や省エネルギー、省資源への貢献を検討しながら開発されています。それらの製品は⼯業、⽣活、再⽣可能エネルギーなどの幅広い分野で使われています。今後もカーボンニュートラルに貢献する製品を開発していきます。

シリコーン

当社グループが生産するシリコーンは5,000種を超える製品があり、家庭用品や自動車、建築、エネルギー分野など、さまざまな形で使われています。そして、それぞれの用途で温室効果ガスの削減に貢献しています。

2024年3月にグローバル・シリコーン・カウンシルがシリコーンの市場全体について、シリコーン製造時の温室効果ガス排出量とその利用による温室効果ガス削減効果を、シリコーンの代替品または代替方法と比較しました。その結果、製品として使われるシリコーンは、シリコーンの製造と廃棄処理段階で排出される温室効果ガスの約14倍もの排出量削減の効果があることが分かりました。これは年間1億5,900万CO2-トンの温室効果ガスの削減に相当します。

自動車、建築の2用途で使用されているシリコーンは、シリコーン全体の温室効果ガス排出削減の中で大きな比率を占めています。シリコーンは、持続可能性の向上に大きく貢献しています。

グローバル・シリコーン・カウンシル「Update of the Si-Chemistry Carbon Balance」( 2024年6月現在、一般公開資料を準備中)

温室効果ガスの排出削減効果

図:温室効果ガスの排出削減効果。製造時の排出量と平均削減効果の比率=1:14

温室効果ガスの排出削減効果のある分野と主な用途

図:温室効果ガスの排出削減効果のある分野と主な用途。建築、自動車、エネルギー、その他
TOPIC

シリコーン製品の高機能化と環境配慮型製品を拡充 ~1,000億円規模の投資を実施~

2023年7月、信越化学はシリコーン事業で1,000億円規模の投資を実施することを発表しました。高機能シリコーン製品への需要は拡大し続けています。特にカーボンニュートラルに役立つ環境対応製品への期待は大きく、今後ますます需要が拡大していきます。こうした社会と顧客の要請に応えるため投資を実施しシリコーン製品の用途を拡大し、製品構成の高機能化と環境配慮型シリコーンの拡充に取り組みます。併せて、生産工程でのグリーン化も進め、カーボンニュートラルへの取り組みを加速します。

詳細は、当社ホームページに掲載のニュースリリースをご覧ください。
シリコーン製品の高機能化と環境配慮型製品を拡充

塩化ビニル樹脂

塩ビの原料の約6割は地球に豊富に存在する塩です。ほかの汎用樹脂に比べると石油資源への依存度が低く、環境への負荷が小さいことが特徴です。塩ビの原料から製造工程にいたるエネルギー消費量はほかの汎用樹脂の約6割です。耐久性が高くリサイクルも容易なことから、塩ビを使用した樹脂窓や上下水道用の塩ビ管など、建築、土木をはじめとした社会基盤素材として広く使われています。

樹脂窓はアルミに比べて熱伝導率が低く断熱性に優れているため、外気の暑さ、寒さから室内を守り、省エネ効果が期待されています。アルミ窓(単板ガラス)に樹脂の内窓(複層ガラス)を設置した場合、アルミ窓(単板ガラス)のみの場合と比較すると、窓から逃げる熱量を64%も抑えることができます※1。窓からの熱の出入りを抑えることにより、快適な室温を保つことができ、さらに省エネルギーにもなります。

樹脂窓は欧米では主流となっているほか、日本でも近年普及が進みつつあります。2023年度の樹脂窓の日本の出荷実績は31,459トンと、2年連続で過去最高を更新しました※2。また、日本の戸建て住宅の窓の樹脂製比率は33.2%と前年よりも4.7%も増加しました。地域別でみると、寒冷地である北海道では戸建て住宅の窓の98.3%が樹脂製です※3。なお、2030年に日本の戸建て住宅で樹脂窓が採用されることにより、二酸化炭素の排出量を年間64万t-CO2削減することが可能です※4

窓から逃げる熱量の比較

図:窓から逃げる熱量の比較。アルミ窓(単板ガラス)を100とした時、アルミ窓(単板ガラス)+樹脂内窓(複層ガラス)は35.7で64.3%カット。

※1(一社)日本建材・住宅設備産業協会 ウェブサイト

※2塩ビ工業・環境協会「塩化ビニル樹脂 製品別生産出荷実績表」

※3(一社)日本サッシ協会 「2024年3月版 住宅用建材使用状況調査」

※4(一社)日本化学工業協会「2030年を評価対象年としたcLCA事例 第4版 No.04 -樹脂窓-」

塩ビ管や継手は50年を超える歴史のある製品です。その実績と特長を生かし、水道管や下水道管をはじめ、幅広い用途に使用されています。便利さ、経済性、省資源においても、社会を基礎から支える大切な資材として、私たちの暮らしに大きく役立っています。塩ビ管はダクタイル鋳鉄管※5と比較して1メートルあたりのライフサイクルCO2排出量※6は1/5と少なく、2030年に日本のダクタイル鋳鉄管が全て塩ビ管に置き換わった場合、二酸化炭素の排出を年間179万t-CO2も削減することが可能です※7

配管1mあたりのCO2排出量

図:配管1mあたりのCO2排出量。ライフサイクルCO2排出量の比率、塩ビ管:ダクタイル鋳鉄管=1:5

※5ダクタイル鋳鉄管
鋳鉄組織内の析出黒鉛形状を片状から球状に変えた球状黒鉛鋳鉄で製造された管。片状黒鉛鋳鉄の2倍以上の強度と高い靭性を有する。

※6ライフサイクルCO2排出量
製品の原料採取から製造、使用、廃棄やリサイクルの過程における二酸化炭素の総排出量。

※7(一社)日本化学工業協会「2030年を評価対象年としたcLCA事例 第4版 No.05 -配管材料-」

レア・アースマグネット

レア・アースマグネットは従来のフェライト磁石の約10倍の磁力があるため、小型でも強い磁力を発揮できます。この特性を生かして、ハイブリッド車や電気自動車のモーターや、省エネルギータイプのエアコンのコンプレッサーモーターなどの小型化、軽量化、高出力化に貢献しています。 例えば、エアコンのコンプレッサーモーターにレア・アースマグネットを使用することで、エネルギー消費効率を5~10%改善することが可能になります。これにより消費電力量が削減され、二酸化炭素排出量の削減に寄与しています。さらに、レア・アースマグネットは風力発電の発電機に使われており、再生可能エネルギーの普及にも貢献しています。

コラム 環境対応車を支える信越化学グループの製品

当社のネオジム磁石※1は、環境対応車である電気自動車やハイブリッド車の心臓部である駆動モーターやジェネレーターに使用されています。システム制御のパワーコントロールユニットには、当社のシリコンウエハー、封止材、放熱材などが使用されています。

ガソリン車に比べてハイブリッド車では走行時の二酸化炭素を約40%削減、電気自動車では100%削減が可能です※2

駆動モーター&発電機(ネオジム磁石)
・小型・軽量化
・耐熱性
・渦電流低減

スターター・発電機(ネオジム磁石)
・高出力
・耐熱性

パワーコントロールユニット(シリコンウエハー、封止材、放熱材)
・小型・軽量化
・高密封性
・放熱性

また、製品の生産にあたってもカーボンニュートラルの観点を取り入れています。レア・アースマグネットの生産工場であるシンエツ マグネティクス フィリピン社(フィリピン)では、発電能力約1,200kWの太陽光パネルを設置し、2023年6月より運用を開始しました。これにより、CO2排出量を年間1,026t-CO2削減することが可能になります。国内でも、信越化学 武生工場に発電能力137kWの太陽光パネルを設置し、年間62t-CO2の削減が見込めます。当社では、環境対応車に使われる各種製品の安定供給と新製品の開発を進めており、その出荷量は年々増加しています。このように、当社の製品はCO2排出量の削減に大きく貢献しています。

※1ネオジム磁石
レア・アースマグネットの一種。ネオジウムや鉄、ボロンなどを主成分とする大変磁力の強い磁石。磁力の強さを生かして、モーターなどの小型化、省エネルギーに貢献している。

※2出典:経団連「グローバル・バリューチェーンを通じた削減貢献」

環境対応車に使われる当社のネオジム磁石のCO2排出量削減への貢献

世界各国のカーボンニュートラルに向けた政策を受けて、環境対応車の割合は急速に高まっています。2030年に世界で環境対応車が普及することにより、二酸化炭素の排出量を年間45,874万t-CO2削減することが可能です※3。また、国際エネルギー機関(IEA)は、2035年に電気自動車の世界販売は50%超になると予測しています※4

※3(一社)日本化学工業協会「2030年を評価対象年としたcLCA事例 第4版 No.05 -次世代自動車材料-」

※4IEA「Global EV Outlook 2024」

今後の課題と挑戦

  • ネオジム磁石:製造設備の増強による安定供給とリサイクルの推進、さらなる高性能化と小型軽量化
  • シリコンウエハー:微細化やその他の要件を支える高品質なシリコンウエハーの安定供給
  • 封止材:高密封性、高絶縁性
  • 放熱材料:高放熱性