2050年カーボンニュートラル達成策
信越化学グループは2050年カーボンニュートラルに向け、温室効果ガス排出量(スコープ1、スコープ2)を実質ゼロとするための計画を策定しました。
カーボンニュートラルに向けた取り組み
当社グループでは、各事業で拡大に向けた新工場の建設や増産工事への投資を実施しています。これらの投資では、生産性とエネルギー効率を極限まで高めることに取り組んでいます。その代表例が、2024年に建設を完了し稼働したシンテック社(米国)の新工場です。しかしながら、現時点の実用可能な技術では、新増設に伴うCO2の排出をゼロにすることはできません。
引き続き既存の工場の生産性とエネルギー効率を極限まで高め続け、新増設の際は最新の技術を導入し、下記の「カーボンニュートラルに向けた取り組み」で示した課題に取り組むことで、2050年カーボンニュートラルに取り組んでいきます。
カーボンニュートラルに向けた取り組み

当社グループの削減策

当社が想定している2050年に向けた削減策の構成比は、上図のとおりです。今後の技術革新に応じて、最適な削減手段を選択していきます。
タイで再生可能エネルギーを導入し、温室効果ガス排出量を削減
シンエツ シリコーンズ タイランド社、アジア シリコーンズ モノマー社、シンエツ ニュー マテリアルズ タイランド社の3社は、日鉄エンジニアリング株式会社と大阪ガス株式会社が共同出資するNS-OG Energy Solutions社(以下NSET社)から、バイオマスコージェネレーションシステムによる再生可能エネルギーを受給することになりました。2027年の受給開始を目指し、取り組みを進めます。
NSET社による再生可能エネルギー供給事業は、環境省の令和6年度「二国間クレジット制度(Joint Crediting Mechanism: JCM)資金支援事業のうち設備補助事業」※1に採択された取り組みです。NSET社が、シンエツ シリコーンズ タイランド社の敷地内に本設備を設置、操業管理し、タイ国内で産出された木質チップを燃料にして製造した再生可能エネルギー(電力・蒸気)の全てを、これらの3社向けに供給します。
この取り組みを通じて新たに調達したエネルギーは、3社で使用するエネルギーの一部を賄うことになります。この取り組みにより、3社合計の温室効果ガス排出量は年間で約4.8万t-CO2の削減となる見込みです。
※1二国間クレジット制度(Joint Crediting Mechanism: JCM)資金支援事業のうち設備補助事業
優れた脱炭素技術などを活用し、途上国などにおける温室効果ガス排出量を削減する事業を実施し、測定、報告、検証を行う事業。途上国などにおける温室効果ガスの削減とともに、JCMを通じて日本およびパートナー国の温室効果ガスの排出削減目標の達成に資することを目的とする。優れた脱炭素技術などに対する初期投資費用の2分の1を上限として補助を行う。なお、本事業はタイ国政府と日本政府の協力の下で実施されている。
本事業のスキームのイメージ

「地産地消型PPA(群馬モデル)」への参加
電力における排出量の低減に向けた取り組みとして、信越化学は2024年3月、群馬県が提供する「地産地消型PPA※2(以下、群馬モデル)」への参加を決定しました。
群馬モデルは、群馬県営水力発電所の電気を群馬県内事業者へ提供する新たな制度です。水力発電により生み出される電力は、温室効果ガスを排出しないグリーンな電力となります。同制度を通じて新たに調達する電力は、信越化学群馬事業所横野平分工場で使用する電力の全てを賄い、同分工場における温室効果ガス排出量を約90%削減できるようになります。
※2PPA
「Power Purchase Agreement」の略。電力使用者が発電事業者から一定期間、単価を固定して電力を購入する契約形態。

群馬県内の水力発電所

群馬版PPAモデル(群馬県提供資料を元に作成)
コージェネレーションシステムの導入
信越化学の群馬事業所と直江津工場では、天然ガスを使用したコージェネレーションシステム※3を導入し、蒸気と電力を作り、製造設備の稼働を支えています。群馬事業所は2022年11月、温室効果ガス排出量削減に向けて磯部工場に2基、松井田工場に1基のガスタービン発電設備を増強しました。
これらのコージェネレーションシステムは、コージェネ財団主催の「コージェネ大賞2023」で、最高位の「産業用部門 理事長賞」を受賞しました。磯部工場および松井田工場は、これらのコージェネレーションシステムの導入により電力の自給率が将来的に100%になり、CO2排出量を年間約24,000t-CO2削減することが可能になりました。
※3コージェネレーションシステム(熱電供給)
天然ガスや石油、液化石油ガスなどを燃料として、エンジンやタービン、燃料電池などの方法で発電し、その際に生じる熱をスチームとして同時に回収するシステム。電力と廃熱の両方を有効利用することでCO2排出量の削減、省エネルギーによる経済性向上ができる。

カーボンニュートラル社会の実現に貢献するためのその他の取り組み
ライフサイクルアセスメント実施のための取り組み
当社グループは、ライフサイクルアセスメントを実施することで、サプライチェーン全体での温室効果ガスの削減に貢献していきます。
物流における温室効果ガス排出量の削減
製品輸送時に排出される温室効果ガスの削減に取り組んでいます。この取り組みは、温室効果ガスのスコープ3排出量の削減に寄与します。
削減例 | 削減に寄与しているスコープ3排出量のカテゴリー |
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メタノール輸送におけるモーダルシフト※1 (タンクローリー→鉄道) |
カテゴリー4「製品の輸送時による排出」 |
シリコンウエハー輸送におけるモーダルシフト (航空機→船舶) |
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シリコーン製品輸送におけるモーダルシフト (トラック→鉄道) |
※1モーダルシフト
トラックなどによる貨物輸送を、環境負荷の小さい鉄道や船舶に転換すること。
温室効果ガス排出量の削減に貢献する製品の製造販売の拡大
当社グループの製品は住宅やインフラストラクチャー、電気自動車、DX、GXをはじめとした幅広い分野に利用され、生活や産業の基盤を支えています。これらの製品の多くは、温室効果ガスの削減にも寄与しています。2021年6月に日本政府が2050年カーボンニュートラルを目指す上で不可欠な14の分野を掲げましたが、当社グループの2024年度の連結売上高に占める当該14分野への売上比率は約7割に上ります。今後とも、こうした製品の開発、製造、販売の拡大に注力することで、社会全体のカーボンニュートラルに貢献していきます。
成長が期待される14分野

成長が期待される14分野※2 | グリーン成長戦略で挙げられている製品や技術 | グリーン成長戦略に貢献する信越化学グループ製品や技術※3 |
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①洋上風力・太陽光・地熱産業 |
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②水素・燃料アンモニア産業 |
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③次世代熱エネルギー産業 |
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④原子力産業 |
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⑤自動車・蓄電池産業 |
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⑥半導体・情報通信産業 |
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⑦船舶産業 |
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⑧物流・人流・土木インフラ産業 |
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⑨食料・農林水産業 |
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⑩航空機産業 |
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⑪カーボンリサイクル・マテリアル産業 |
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⑫住宅・建築物産業・次世代電力マネジメント産業 |
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⑬資源循環関連産業 |
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⑭ライフスタイル関連産業 |
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※2出典:「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」(2021年6月 日本政府発表)
※3将来の製品も含みます。また、製品や技術の文字の色は事業セグメントを表しています。
- 生活環境基盤材料
- 電子材料
- 機能材料
- 加工・商事・技術サービス
※4半導体材料は、シリコンウエハー、フォトレジスト、マスクブランクス、封止材、ペリクル、合成石英ガラス基板、高純度シランなどを指します。半導体材料は分野⑥の半導体産業に該当しますが、半導体材料を使用して製造された半導体はさまざまな分野の制御システムなどに貢献するため、⑥以外の分野にも記載しました。