知的財産管理

知的財産戦略

信越化学グループは、「事業を守り、事業価値を高めるための有効な特許を出願・権利化し、また他社特許を侵害しない」という方針のもと、知的財産基本規程を策定し、知的財産の取得、管理、活用を行っています。この規程に基づいて、「独創性」の高い有用な知的財産を取得し、第三者による侵害から保護しています。同時に、第三者の知的財産に関する権利を尊重することも定めています。その他の具体的な活動として、テーマに関する継続的な特許のウオッチング(SDI:selective dissemination of information)に注力し、知的財産管理に活用しています。

各研究所のテーマに関しては、毎月特許部の部員が研究所を訪問もしくはウェブ会議で、特許担当者と主要研究者を交えて特許検討会を実施し、他社特許権の侵害がないかなどの検討を行っています。加えて、社長をはじめ経営陣と知的財産担当役員は頻繁にコミュニケーションを取っています。その結果、2024年度において特許に関連して事業の進行が妨げられている事案はなく、訴訟なども発生していません。

また、特許出願の明細書を作ることができるように研究員一人一人を教育し、特許を念頭に置きながら、自分事として研究に取り組む仕組みづくりを特許部が主導しています。

さらに、業務上有益な発明、改良、工夫、考案をした従業員を以下のような制度で表彰しています。

実績補償表彰

特許権などの形で会社に⼤きく貢献した発明や考案を⾏った従業員を表彰する制度

2024年度:35件(信越化学)

多数発明者表彰

多数の発明を⾏い、かつ、会社に多数の特許権を取得させた従業員を表彰する制度

2024年度:21件(信越化学)

特許部長インタビュー

写真:朴 玉美

より強固な参入障壁の構築を目指します

信越化学工業 特許部長 朴 玉美

Q1 当社の知的財産戦略の特徴と、特許部の役割をどのように考えていますか。

当社は、産業や生活の基盤となるさまざまな素材製品を提供しており、事業部ごとの事業環境が大きく異なるため、事業部ごとに会社の経営方針に基づいて、知的財産戦略が策定されております。また、研究開発部門においても、激しい市場変化に敏速に対応するため、事業部を横断した新規事業につながる新規研究を進めるべく、知的財産戦略が策定されております。

特許部はこれらの知的財産戦略を推進し、知的財産の取得、管理、活用を通じて、市場における事業の優位性の確保に貢献する役割を担っております。具体的には、研究開発部門と緊密に連携をとりながら、研究開発活動で生まれた成果を他社が追随できない価値として早期かつ確実に権利化することにより、事業の優位性を確保し、会社の収益に寄与することを目指しております。

Q2 当社は、Clarivate Top 100 グローバル・イノベーター™に14年連続して選出されています。当社の知的財産戦略の優位性をどのように考えますか。

本アワードは、過去5年間の特許の出願数と保有数により抽出された企業と機関を対象に、「影響力」、「地理的投資」、「成功率」および「希少性」を組み合わせた指標により評価されます。当社はこのうち、「影響力」(後続の特許出願に引用された回数で評価)および「希少性」(発明の独自性を測る指標であり、既存の類似の発明に対してどれだけ多様な技術の組み合わせであるかで評価)が高く評価されました。特に「希少性」が高いということは、独自性の高い先進的な研究開発が行われているということの裏付けになるかと思います。

Q3 この10~20年の間に信越化学の知的財産戦略はどのように進化しましたか。

従来当社では、事業の継続性や自由度確保の観点から、「守り」の知的財産活動を主に行ってきました。しかし、この10~20年の間で、この「守り」の知的財産活動を維持しつつ、他社に対する競争優位性や参入障壁を意識した排他性の高い「攻め」の知的財産活動を目指すようになりました。

また、従来は特許権および商標権による製品保護が主流でしたが、例えば、昆虫のフェロモン成分を圃場に放散する害虫防除剤放散器や、マイクロLEDディスプレイ向けの半導体素子などの微小構造体を移送するための微小構造体移載用スタンプ部品のように、物品の形態に特徴がある製品については、意匠権を積極的に取得して多面的な保護を図るようになりました。

Q4 今後の知的財産戦略をどのように展開しますか。

生成AIなどを用いた新しいツールを活用して、知的財産に関するさまざまな業務の効率化を目指したいと思います。特に研究開発部門と連携して、部門間の垣根を越えてアイディア創出の段階から、顧客の将来ニーズを満たすシーズの探索および権利化を中心に強化していきたいと思います。

また、研究開発活動の成果物である知的財産について、出願による権利化とノウハウとしての秘匿化を戦略的に組み合わせることにより、より強固な他社参入障壁の構築を目指したいと思います。

TOPIC

「Clarivate Top 100 グローバル・イノベーター™」に14年連続選出

当社は、「Clarivate Top 100 グローバル·イノベーター™」に、14年連続で選出されました。

同アワードは、革新的なインテリジェンスを提供する世界有数の情報サービスプロバイダーであるクラリベイト社(英国)が、独自のデータベースに基づいて評価し、世界のイノベーション環境を形成する最も影響力のある企業と機関に授与されます。14年連続の選出は、国内では当社を含め9社であり、化学企業では当社のみです。

ロゴ:Top 100 Global Innovator 2025 Clarivate TM