人材戦略

人材戦略の基本方針

人的資本投資※1、2

図:人的資本投資。重点テーマ:専門性の深耕を促進 など。関連する重点的な施策:OJTを基本とする人材育成のサイクル など。関連指標:勤続年数 など。

※1信越化学の従業員と出向者を対象としています。

※2関連指標に記載されている実績は、2024 年度実績。

※3信越化学単体のデータです。

当社は労働生産性をさらに高めることを目指しています。そのため「従業員1人当たり営業利益」を重要な指標とし、高い生産性を実現する「T字型人材」の育成に注力しています。「T字型人材」とは、ある業務や領域の専門家であるとともに、その他の分野でも活躍できる幅広い仕事力を有する人材です。近年の営業利益の平均増加率は従業員の平均増加率を上回り、従業員1人当たりの生産性の向上につながっています。

当社ではT字型人材を育成するためにOJT(On the Job Training)を基軸としています。従業員の適性と職業人として目指す姿を尊重した人材の配置を行い、一人一人が担当する仕事で真の専門家になることを支援しています。そのため、当社では画一的な人事異動、いわゆる定期的な配置転換は実施していません。担当している業務を深耕することで、高い水準の仕事力を有する従業員の育成に注力しています。

海外のグループ会社でもここで述べた人材育成の考え方を基軸として、各国の制度、慣習、人材と文化の多様性を尊重した取り組みが行われています。若い社員に海外勤務を経験させるとともに、日本に勤務する従業員も海外の取引先との実務を通じて、国際性を身に付けています。

教育・研修、自己啓発

信越化学グループではOJTに加えて成長の段階に応じたさまざまな研修プログラムを提供し、従業員の成長を支援しています。研修制度には、階層別研修、国際化対応研修、聴講生制度、環境教育、安全教育、メンタルヘルス教育、AI研修などがあります。

階層別研修

階層ごとに求められる、業績向上に必要不可欠なマネジメント力、リーダーシップ、コミュニケーション力、課題解決力などを学ぶため、階層別研修を行っています。

  • 部長層研修(アドバンストマネジメント研修、S職群・M職群研修)
  • 課長層研修(ミドルマネジメント研修)
  • 係長層研修(ラインマネジメント研修、スタッフマネジメント研修)
  • 一般社員研修(中堅層研修、女性社員研修、ジュニアリーダー研修、入社3年目研修)

国際化対応研修

当社グループの取引先は世界に広がり、現在の連結売上の約8割は海外売上です。そのため、円滑な業務遂行のためには外国語でのコミュニケーション能力が必要不可欠となっています。そこで、当社では、以下のような研修を行っています。

  • 英語研修(ミーティングスキルコース、プレゼンテーションスキルコース)
  • 異文化間コミュニケーション研修
  • 中国語会話教室

AI研修

AIを使いこなせる人材を発掘、育成し、社内全体のレベルアップを図るために、以下のようなAI研修を会社が費用を負担して行っています。2024年度は194名、2021年度からの4年間で延べ994名の従業員が受講しました。

  • 新入社員教育:新入社員、若手社員を対象にしたeラーニング
  • AI研修
    1)基礎研修:Pythonによるプログラミングなどの習得
    2)PBL(Problem Based Learning):中堅社員を対象に課題解決型学習により実務課題の解決手法を学ぶ(5ヵ月間)

  • DXマネジメント研修:プロジェクトに係る部課長を対象にしたeラーニング

MI研修

機械学習を駆使して材料探索できる人材を育成し、研究開発期間の短縮を図るために、以下のような研修を実施しています。2024年度は49名、2021年度からの4年間で185名の従業員が受講しました。

  • MI(materials informatics)実習:研究所の研究員を主な対象とした実習。当社の独自資料に基づき実施。受講者の習熟度により3つのコースを準備(初級、中級、上級)

大学聴講生派遣制度

信越化学は、1962年に大学聴講生派遣制度を設けました。この制度は、現場力の向上を目的として、当社グループの生産現場のオペレーターなどを毎年数名から10名程度を選抜し、1年間現場を離れて実施される、いわば国内留学の研修プログラムです。研修期間では、大学の授業を聴講して専門的知識を学ぶだけではなく、日常業務ではあまり関わることができない他事業や他工場、本社各組織の人々とのつながりを持つことを大切にしています。発足以来63年間で延べ557名の従業員が同制度を修了し、修了者の多くが各職場の中心的存在として活躍しています。

研修制度一覧

図:研修制度一覧。階層別研修、専門教育、AI・MI研修、環境・安全教育、品質管理教育、特別教育、一般教育。

※1Material Informatics

※2Problem-based Learning

能力成果主義による人事考課制度

当社グループでは、従業員の能力や仕事での成果を重視した人事制度を導入しています。高い目標に向かって挑戦することを評価し、その成果と姿勢を処遇に反映することで、従業員の意欲向上につなげています。従業員は期の初めに意欲的な業務目標と改善目標を定め、その目標に挑戦することで成長を促しています。部下が目標を達成するために、上司は助言と指導を行っています。期末には目標に対する達成度を評価するとともに、能力、成長の可能性、仕事に取り組む姿勢も考慮し、従業員の意欲を高め成長につながる取り組みをしています。人事制度を公正かつ適切に運用するために、人事考課を行う全ての管理職を対象とした考課者訓練を実施し、公平な評価ができるように取り組んでいます。また、評価基準を従業員に周知することで透明性を高めています。さらに、上司と部下との面談制度を設けて、両者の意思の疎通を図っています。面談では「コミュニケーションシート」を活用し、課題をお互いに確認し合いながら半年間の目標を設定、その成果のフィードバックを行い、さらなる能力開発を進めています。

「人材戦略」での信越化学グループの対象は、信越化学の従業員と出向者です。