信越化学工業株式会社(本社:東京、社長:斉藤恭彦、以下信越化学)と国立大学法人北海道大学(所在地:北海道、総長:寳金清博、以下北海道大学)は、マイクロ流体デバイス*1を部品として組み込んだ脂質ナノ粒子(LNP)*2の生産装置を開発いたしました。
信越化学は2025年4月より本生産装置の生産を開始し、販売はライラックファーマ株式会社(本社:北海道、社長:須佐太樹)が行います。
LNPはCOVID-19に対するmRNAワクチンにも利用されており、今後は様々な感染症やがんワクチンなどに応用が広がると期待されています。
近年、マイクロ流体デバイスを用いたLNP作製法が国内・海外を問わず注目されています。LNPは、脂質原料溶液と核酸原料溶液を迅速に混合することで作られます。その工程にマイクロ流体デバイスを用いることにより、従来の作製法と比較してLNPの粒径を精密に制御することが可能となります。一方、マイクロ流体デバイスを用いたLNP作製法は一度に調製できる粒子量が少なく、生産性を向上させることが課題でした。
北海道大学独自のマイクロ流体デバイスである「iLiNP®」と信越化学の素材(主として合成石英)及び加工技術を組み合わせることにより、大量生産に適したマイクロ流体デバイスを開発しました。加えて、子会社の信越エンジニアリングの装置設計技術を生かして、本マイクロ流体デバイスを組み込んだ、医薬品製造に必要な GMP基準*3に準拠したLNP生産装置を開発しました。
マイクロ流体デバイスを用いたLNP生産装置の大きな特長は、LNPの生産量を1台の装置で需要に応じて切り替えられる点です。個別化医療*4のための少量多品種のナノ医薬品から感染症用のワクチンのような大量生産まで、僅か1㎡のスペースに設置した1台の装置で、異なる種類のLNPを製造することが可能となります。将来的には、平時には企業のニーズに応じたナノ医薬品を製造し、パンデミックが発生した際には感染症用のワクチン製造に切り替えることが可能な基盤設備となることを目指します。
さらに、信越化学と北海道大学の研究グループでは、研究開発向けにさらに小型化したベンチトップ型LNP生産装置の開発を進めており、試作品の開発は2025年末を目指します。LNPの研究開発から量産まで段階に応じた生産装置を取り揃え、円滑な量産化への移行を実現します。
信越化学は、これまで培ってきた技術力とノウハウを生かして、持続可能な社会の実現と産業の発展に貢献していきます。
以上
*1 マイクロ流体デバイス … 流路幅が数µm〜数百µmの微小な流路をもつデバイス。
*2 脂質ナノ粒子(LNP) … Lipid Nanoparticleの略語。脂質を主成分とする直径10nmから1000nm程度のナノ粒子のこと。COVID-19のmRNAワクチンにも使用されている。
*3 GMP … Good Manufacturing Practiceの略語(日本語では、医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準)。
*4 個別化医療 … 患者の遺伝情報などを調べて、患者一人ひとりにあった治療法や治療薬を選択する医療のこと。

この件に関するお問い合わせ
- 信越化学工業(株) 広報部 小石川
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- お問い合わせ
- 国立大学法人北海道大学 大学院工学研究院
- 准教授 真栄城正寿
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- (配信元)国立大学法人北海道大学 広報課・広報渉外担当
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