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スマートフォンや家電をはじめ、あらゆる機器に搭載されている半導体。医療や交通などの社会インフラ、AIやIoTといった最先端技術にも活用されています。その半導体の基板となるのがシリコンウエハーです。
人々のくらしを豊かにし、半導体の進化を支え続けるシリコンウエハーの製造工程をご紹介します。
地球上に存在する元素で、最も多いのが約50%の酸素(O)、2番目が約26%のケイ素(Si)です。ケイ石は、酸素とケイ素が結合した二酸化ケイ素(SiO2)のかたちで天然に存在し、高純度のものがシリコンウエハーの原料となります。
ケイ石を炭素と一緒に電気炉で溶かし、酸素を取り除きます。さらに複雑な化学反応を起こさせ、金属シリコンをつくります。これで約98%の純度にまで精製されますが、シリコンウエハーの原料としてはまだ不純物が多く、使用できません。
■SiO2+2C→Si+2CO
金属シリコンを微細な粉状にし、塩化水素(HCI)と反応させて、トリクロロシラン(HSiCl3)をつくります。このトリクロロシランを蒸留し、極限まで精製します。
■Si+3HCl→HSiCl3+H2
極限まで精製したトリクロロシランと、超高純度の水素を反応させ、多結晶シリコン(多数の微小な単結晶からなる集合体)をつくります。
■4HSiCl3→Si+3SiCl2+2H2または、HSiCl3+H2→Si+3HCl
でき上がった多結晶シリコンは、純度99.999999999%(イレブン・ナイン)という超高純度を誇ります。
多結晶シリコンを粗く砕きます。微量のドープ剤(半導体の特性を整えるための不純物)を添加して石英ルツボに入れ、加熱炉で溶かします。CZ法は、この融液に種結晶を接触させ、ゆっくりと引き上げながら単結晶を成長させる製造法です。温度や引き上げ速度を調整することで、直径を制御します。
CZ法により、方位が一定で乱れのない(無転位の)単結晶シリコンのインゴット(塊)を得ることができます。
添加するドープ剤の種類※によって導電型(P型・N型)を分け、添加する量で抵抗率を制御します。
※P型:ボロン、N型:リン・アンチモン・ヒ素
単結晶シリコンインゴットを、ワイヤーソーで厚さ1mm程度に切断し、ウエハー状にします。
表面の凹凸をなくすために、きわめて粒子の細かい研磨剤を含んだ研磨液で、何段階にも分けて鏡面に磨き上げます。
シリコンウエハーの製造には、使用する薬品や水などの純度が重要で、エレクトロニクス・グレードの薬品や超々高純度の純水を使用しています。「ソリ」「平坦度」「キズ」「汚れ」といった表面の精度は、切断・研磨・洗浄などの加工工程で決まります。
最終洗浄したシリコンウエハーは、厳重に密封して半導体メーカーに出荷します。ICや超LSIなどの集積回路素子、トランジスタやダイオードなどの個別半導体素子の製造に利用され、様々な機器に組み込まれていきます。
CZ(Czochralski:チョクラルスキー)法で製造した大口径の単結晶シリコンインゴットは、主に直径100〜300mmのウエハーに加工されます。CZ法で使用する石英(SiO2)ルツボは酸素を含有するため、微量の酸素が単結晶シリコン内に入り込みます。ICを製造する際には、単結晶シリコン内の酸素濃度がきわめて重要です。信越半導体 白河工場では、この酸素濃度や導電型、抵抗率をきめ細かにコントロールし、欠陥のない高純度の単結晶シリコンを製造しています。
ポリッシュドウエハーは、キズや歪みがない、美しい鏡面をもったウエハーです。単結晶シリコンインゴットから、ワイヤーソーで1mmほどの厚さに切り出したウエハーを、アズカットウエハーと呼びます。この状態ではまだ切断面の粗さや厚さのバラツキが目立つため、外周部の面取り加工(べべリング)、厚さのバラツキを小さくする両面粗研磨(ラッピング)、加工歪層の除去(エッチング)、鏡面研磨(ポリッシング)を施し、ポリッシュドウエハーに仕上げています。
エピタキシャルウエハーは、ポリッシュドウエハーの表面に、単結晶シリコンによる0.01mm(10µm)ほどの薄い結晶層(エピタキシャル層)を成長させたウエハーです。エピタキシャル層の成長に用いる化学気相成長法(CVD)は、きわめて清浄な空気を必要とします。厳重に管理したクリーンルーム内でつくられたエピタキシャルウエハーは、抵抗率面内均一性に優れ、結晶欠陥がほとんどありません。この特性から、ロジックIC、撮像素子、個別半導体素子などに広く用いられています。