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PROJECT STORY ~挑戦の歴史~

SPECIAL CONTENTS 02

03 大型液晶テレビの実現を支える、液晶パネル用“重ね合わせ装置”の開発

日々大型化、薄型化する液晶テレビ。この進化のプロセスの背景には、さまざまな技術革新のドラマがある。例えば、液晶パネルの製造技術革新への挑戦…このドラマの主人公は信越化学工業のグループ会社であり、プラント機器をはじめとしたエンジニアリングやメカトロニクス関連システムの製造・販売を手がける信越エンジニアリングだ。ここでは開発のキーパーソン、大谷と竹節の2名の証言をもとに、製造装置エンジニアリングの醍醐味に迫る。

Stage01 新プロセスに対応する新装置の開発へ

2010年2月、磯部工場より記念すべき出荷があった。それは大型トレーナーに乗せられた200台目のAESUVであった。「AESUVとは、液晶組立工程の中のODFというプロセスにおいて、真空中で2枚のガラス(TFTとカラーフィルター)を誤差1μm以下に位置合わせをし、液晶を封止する装置のこと。このAESUVが行うODF工程を実現できたことで、大型液晶パネルの生産が可能になり、薄型テレビの普及に弾みがつきました。つまり、当社の技術がなければ、もしかしたら現在の薄型テレビの普及はなかったかもしれない—。それほど重要なコアテクノロジーなのです」。この開発に携わった主任技術員の大谷は語る。

  • Stage01 新プロセスに対応する新装置の開発へ
  • Stage02 「性能がでないなら自分たちで創ってしまおう」
  • Stage03 試作と検証の繰り返しだけが、理想を実現に近づける
  • Stage04 次世代モデル製造用に向けて改造
  • Stage05 新型チャックへのシフトを決意
  • Stage06 より高精度、より大型化といったニーズに応える技術を磨く
Stage01 新プロセスに対応する新装置の開発へ

もともと信越エンジニアリングは液晶パネルを“大気中で重ね合わせる装置”を開発販売し、多くのユーザーに納入してきた。この分野ではシェアNo.1の位置づけにあった。ところが2001年頃を境に、パネルの製作方法が変わり始めた。液晶パネルの大型化に伴い、従来からのプロセスである、内部を真空にした空のパネルに液晶を吸い上げる方式では対応に限界があったためだ。そこで新たに主流になりつつあったのが、“2枚のガラス基板の一方に液晶を塗布しておき、真空中で重ね合わせ封止する”ODFというプロセス(※上図参照)だった。「プロセスや装置が変わるということは、当社にとっては死活問題。そこで他社よりも早く、新プロセスに対応する新装置の開発に着手したのです」。

  • Stage01 新プロセスに対応する新装置の開発へ
  • Stage02 「性能がでないなら自分たちで創ってしまおう」
  • Stage03 試作と検証の繰り返しだけが、理想を実現に近づける
  • Stage04 次世代モデル製造用に向けて改造
  • Stage05 新型チャックへのシフトを決意
  • Stage06 より高精度、より大型化といったニーズに応える技術を磨く
Stage02 「性能がでないなら自分たちで創ってしまおう」

プロセスから新しい装置を考えることは、簡単ではなかった。最初に立ちはだかった課題。それは、水平に設置するガラス基板をしっかり固定することだった。重ね合わせ装置は、TFTとカラーフィルターの膜面を上下で対向させ、平坦なプレートに固定し位置合せを行い、貼りつける。従来の装置は大気中で重ね合わせるため、真空を用いた差圧力で上基板を吸着固定する“真空チャック”と呼ばれる固定方法を利用することができた。しかし今度はプロセスを行う環境自体が真空であるがゆえ、従来の気圧の差を利用した真空チャックが使えない。

  • Stage01 新プロセスに対応する新装置の開発へ
  • Stage02 「性能がでないなら自分たちで創ってしまおう」
  • Stage03 試作と検証の繰り返しだけが、理想を実現に近づける
  • Stage04 次世代モデル製造用に向けて改造
  • Stage05 新型チャックへのシフトを決意
  • Stage06 より高精度、より大型化といったニーズに応える技術を磨く
Stage02 「性能がでないなら自分たちで創ってしまおう」

そこで大谷と竹節が発案したのが静電気を使って基板を吸着固定する、“静電チャック”という方法である。「当初は社外から部品として購入することで進めましたが、テスト段階でコストがかかりすぎたため、一念発起して社内で開発することに。性能が出ないなら自分たちで創ろう!この自製の精神こそが“シンエツイズム”であり、世界に認められる技術革新のバックボーンなのかもしれませんね」。主席技術員の竹節は、当時を振り返りこう語る。

  • Stage01 新プロセスに対応する新装置の開発へ
  • Stage02 「性能がでないなら自分たちで創ってしまおう」
  • Stage03 試作と検証の繰り返しだけが、理想を実現に近づける
  • Stage04 次世代モデル製造用に向けて改造
  • Stage05 新型チャックへのシフトを決意
  • Stage06 より高精度、より大型化といったニーズに応える技術を磨く
Stage03 試作と検証の繰り返しだけが、理想を実現に近づける

次に立ちふさがった大きな課題は、「機械構造」だった。真空時に装置にかかる大気圧を受けとめながら、1/1000mmの精度でTFTとカラーフィルターの位置合わせを実現することは至難の業だった。「装置の機械構造そのものの見直しが必要でした。我々だけではなく社内の様々な知見を結集し、またお客様からのフィードバックを受けながら実験機の開発に取り組みました。試行錯誤を繰り返し、気づけば完成までに24ヶ月もの月日がかかっていました」。大谷、竹節、そして信越エンジニアリングの技術のすべてを注ぎ込んだこの装置が、無事に想定する機能レベルをクリアしたときは、2名とも“達成感”と“もう失敗できない”というプレッシャーから開放された安堵感でいっぱいだったという。

  • Stage01 新プロセスに対応する新装置の開発へ
  • Stage02 「性能がでないなら自分たちで創ってしまおう」
  • Stage03 試作と検証の繰り返しだけが、理想を実現に近づける
  • Stage04 次世代モデル製造用に向けて改造
  • Stage05 新型チャックへのシフトを決意
  • Stage06 より高精度、より大型化といったニーズに応える技術を磨く
Stage03 試作と検証の繰り返しだけが、理想を実現に近づける

やっと完成したこの実験機をお客様の製造現場に持ち込み、ラインに組み込んで試験を実施。しかし、ここで機械構造的なトラブルが起こる。「簡単にはいきませんでしたね(笑)。機器の運転方法を調整することでどうにかラインの完全停止は免れましたが、実験機のテストに協力いただいていたお客さんには…とにかく謝るしかありませんでした。実験機はすぐに持ち帰り、問題の原因を徹底追究。また新しいアイデアを考え、実験機の精度を高めていく—。決してあきらめずに理想の機能実現に挑戦することは大変ですが、この仕事のやりがいでもあります」。この繰り返しの結果、量産機は完成。無事納品された機器は評価も上々で、今では韓国、台湾、中国といった海外工場へも次々と出荷されている。

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  • Stage03 試作と検証の繰り返しだけが、理想を実現に近づける
  • Stage04 次世代モデル製造用に向けて改造
  • Stage05 新型チャックへのシフトを決意
  • Stage06 より高精度、より大型化といったニーズに応える技術を磨く
Stage04 次世代モデル製造用に向けて改造

その後、市場で求められる液晶パネルのサイズはどんどん大きくなり、次世代のG6、G7(※上図、液晶パネルのサイズ表記)へと進む。「大型の液晶パネルの製造を実現するには、製造機器のさらなる改良が必要でした。そこで我々はチャンバーの構造を大きく変え、次世代型サイズの液晶パネル生産機を完成させました」。しかし、善かれと思って変更した構造が、予期せぬトラブルを生む。静電チャックの基板落下の問題です。「ここでも地道な仮説立てと検証、振り返りといった“粘り”が、この窮地を脱する力になりました。静電チャックの特性と関係のある問題を見極め、その解決法を探りながら、運転方法の工夫による緩和策も含めて可能な限りの改造を加え、完成度を高めていったのです」。製造現場での対応、そして開発現場での改造アプローチを経て、遂には現行型の構造に至り、G6、G7サイズ向けの生産機は、順調に稼働をスタートすることになった。

  • Stage01 新プロセスに対応する新装置の開発へ
  • Stage02 「性能がでないなら自分たちで創ってしまおう」
  • Stage03 試作と検証の繰り返しだけが、理想を実現に近づける
  • Stage04 次世代モデル製造用に向けて改造
  • Stage05 新型チャックへのシフトを決意
  • Stage06 より高精度、より大型化といったニーズに応える技術を磨く
Stage05 新型チャックへのシフトを決意

開発テーマは性能面へと移る。“タクトタイム(工程上の作業時間)”と“合わせ精度”である。「取り組んだのは、静電チャックの問題点をクリアする新しい基板の固定方法である“粘着チャック”の開発。お客様にお願いして、実機での試験を試みたところ、期待通りの性能と精度を発揮。ここで新型チャック装置へのシフトを決意して、さらなる性能アップ&精度アップへのトライを開始します」。静電チャックに比べて、合わせ精度が格段に良くなる方法を探り、粘着チャックと、それを最大限に活かす機械構造の改良を進め、生産機第一号を完成。「もちろんその後も製造現場で発生する大小さまざまな問題点を受け、それらをクリアすべくモデルチェンジを繰り返し、現在の安定した型に至っています」。

  • Stage01 新プロセスに対応する新装置の開発へ
  • Stage02 「性能がでないなら自分たちで創ってしまおう」
  • Stage03 試作と検証の繰り返しだけが、理想を実現に近づける
  • Stage04 次世代モデル製造用に向けて改造
  • Stage05 新型チャックへのシフトを決意
  • Stage06 より高精度、より大型化といったニーズに応える技術を磨く
Stage06 より高精度、より大型化といったニーズに応える技術を磨く

液晶パネル用“重ね合わせ装置”は今、信越エンジニアリングが提供する“現行構造+粘着チャック”モデルが業界のデファクトスタンダードになりつつある。「私たちが苦労して実現した装置が、多くの液晶パネルメーカーからの高い評価をいただいているのは非常に感慨深いですね。手前味噌ながら“いい仕事をしたな(笑)” と誇らしい気持ちになります」。
現在では、中国より現行の最大サイズであるG8.5向けの装置を18台受注。近々最終ロットの3台の出荷が行われるタイミングである。既に納入した装置は250台を超えるが、今のところ、すべて問題なく稼働している。「より大きな液晶パネル、高い精度で均一性を求められるスマートフォン用のパネルなど、今後もパネル性能の要求に応じて装置改善を行い、AESUVを進化させていきたいですね」。

  • Stage01 新プロセスに対応する新装置の開発へ
  • Stage02 「性能がでないなら自分たちで創ってしまおう」
  • Stage03 試作と検証の繰り返しだけが、理想を実現に近づける
  • Stage04 次世代モデル製造用に向けて改造
  • Stage05 新型チャックへのシフトを決意
  • Stage06 より高精度、より大型化といったニーズに応える技術を磨く