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PROJECT STORY ~挑戦の歴史~

SPECIAL CONTENTS 02

02 レア・アースマグネットの常識を超える、世界最高性能磁石開発への挑戦

磁化が大きく、磁力を保つ力(保磁力)が極めて強い、レア・アースマグネット。今では自動車や家電、デジタル機器などのコア部品として位置づけられている。そんなレア・アースマグネットの歴史にまた、ひとつ大きな足跡が刻まれた。それは世界最高性能の磁石の開発である。ここでは開発のキーパーソン、磁性材料研究所の廣田の証言をもとに、その挑戦ストーリーを追いかける。

Stage01 突破口はある現象の発見

レア・アースマグネットは世の中で最も強力な磁石だが、高温になると磁力を保つ力(保磁力)が大幅に低下し、磁力を消失するという弱点がある。つまり、磁石が磁石でなくなってしまうのだ。これを克服するためDy(ジスプロシウム)やTb(テルビウム)などの重希土類を原料合金に添加する手法が一般的に取られていた。しかしながら、この手法には高性能化に限界があり、さらなる性能アップのため競合各社さまざまな研究開発を繰り返していた。

  • Stage01 突破口はある現象の発見
  • Stage02 トライ&エラーを繰り返す日々
  • Stage03 遂に報われる日が訪れる!
  • Stage04 画期的でも試作検討止まり?
  • Stage05 神様のアシストで一気にビジネスが動く!
  • Stage06 そして次なる革新チャレンジへ
Stage01 突破口はある現象の発見

そんなある日、廣田の上司である中村が、ある現象を見いだす。それは、焼結磁石の表面に重希土類の一種のDy(ジスプロシウム)化合物粉末をわずかに付着させ、熱処理を施すと、Dyが粒界相に沿って磁石内部に拡散し、Nd(ネオジウム)系磁石の耐熱性の指標である保磁力が増大するというもの。「ある意味、偶然を伴う幸運の発見でしたが、これは突破口になる!きっといける!という確信がありました」。この日から、中村と廣田のさらなる挑戦の日々が始まる。

  • Stage01 突破口はある現象の発見
  • Stage02 トライ&エラーを繰り返す日々
  • Stage03 遂に報われる日が訪れる!
  • Stage04 画期的でも試作検討止まり?
  • Stage05 神様のアシストで一気にビジネスが動く!
  • Stage06 そして次なる革新チャレンジへ
Stage02 トライ&エラーを繰り返す日々

これまで業界で一般的だった、重希土類添加による耐熱性能向上の手法ではどうしても越えられなかった壁。それは、保磁力(磁力を保つ力)を確保するためにDyやTbなどの重希土類を添加すると、磁力そのものが大きく減少してしまうという問題だった。その問題をクリアしたのが、中村と廣田が開発した手法“粒界拡散合金法”による新たなアプローチである。この製法はやがて限界を超え、さらには世界最高性能を極め、世界を牽引する技術にまで到達する。しかし、その道のりは決して平坦ではなかったという。

  • Stage01 突破口はある現象の発見
  • Stage02 トライ&エラーを繰り返す日々
  • Stage03 遂に報われる日が訪れる!
  • Stage04 画期的でも試作検討止まり?
  • Stage05 神様のアシストで一気にビジネスが動く!
  • Stage06 そして次なる革新チャレンジへ
Stage02 トライ&エラーを繰り返す日々

「振り返れば、試行錯誤の連続でした。今までにない新規工程ということで、種々のパラメータが全くわからないところからのスタート。一つの条件を変えると、他の条件に影響し、また、やり直すという、トライ&エラーを繰り返す日々が続きました。でも“あの現象”を見いだした時の感動が、モチーベーションになったんでしょうね。不思議と苦労は感じませんでした。あの時感じた“確信”に背中を押され、どんな窮地に立たされても、動じることなく、ここまできたと、いう感じです」。ただひたすら仮説と検証に没頭する歳月は過ぎ、あっという間に6ヶ月の時が流れた。

  • Stage01 突破口はある現象の発見
  • Stage02 トライ&エラーを繰り返す日々
  • Stage03 遂に報われる日が訪れる!
  • Stage04 画期的でも試作検討止まり?
  • Stage05 神様のアシストで一気にビジネスが動く!
  • Stage06 そして次なる革新チャレンジへ
Stage03 遂に報われる日が訪れる!

さすがに半年も経過すると、社内の目も気になった。「大きな成果報告もない我々の取り組みは、たぶん“あいつらは何をやっているんだろう?”という印象を与えただけかもしれません(笑)。でも、信念はぶれることはありませんでした。きっといける!という信念だけは」。そして遂に報われる日が訪れる。当時のレア・アースマグネットの一般的な保磁力増加率の10倍以上を誇る、非常に大きな保磁力増大を達成したのだ。

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  • Stage02 トライ&エラーを繰り返す日々
  • Stage03 遂に報われる日が訪れる!
  • Stage04 画期的でも試作検討止まり?
  • Stage05 神様のアシストで一気にビジネスが動く!
  • Stage06 そして次なる革新チャレンジへ
Stage03 遂に報われる日が訪れる!

「さすがにこの数値は画期的なものだったので、周りの誰もが驚いたようです。今でも忘れない、2004年12月16日のこと。実は私の愛娘の誕生日でもあるんです。連日の試行錯誤の中で、生まれた成果、そして誕生した愛娘。ダブルの喜びですからね。神様の粋な計らいを感じて、それが胸に迫って、生涯忘れられない記念すべき日となりました」。この成果を受けて、研究所全体が盛り上がり、これはいける!量産化もいける!凄いことになるぞ!と議論も白熱。その後は周りの認識も変わり、中村と廣田の2名だけでスタートしたプロジェクトは、多くの人を巻き込みながら一気に「全社を挙げての量産体制確立」へと加速していった。

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  • Stage06 そして次なる革新チャレンジへ
Stage04 画期的でも試作検討止まり?

量産に向けてのパイロットプラントも完成し、家電メーカーや自動車メーカーへのサンプル出荷もスタート。この時点で、粒界拡散合金法によるレア・アースマグネットは世界最高性能を誇るまでになっていた。レアアースの配置法と熱処理(拡散処理)法の更なる技術革新により、少ないレアアースで効率的な保磁力の増大と磁力低下の抑制を実現。効率的なレアアースの利用を可能にした。それでも量産化の道のりは遠かった。「ネックは実績がないことでした。新しい材料を導入する時の宿命で、どのメーカーも採用に踏み切れず、試作品止まり。いくら性能を評価されても、量産受注には結びつかない状況が続きました」。

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  • Stage05 神様のアシストで一気にビジネスが動く!
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Stage04 画期的でも試作検討止まり?

それでも廣田たちは、将来の成功を信じて、さらなるブラッシュアップを続けた。そんな折、ある事態がビジネスの流れを大きく変えるきっかけとなる。尖閣列島問題に端を発する一連の日中の政治的思惑が、レアアースの価格を大きく高騰させたのである。「レアアースの大半を中国に頼る日本にとっては一大事ですが、これを機に最も価格の高い重希土類を大幅に低減できる粒界拡散磁石の重要性がクローズアップされ始めたのです」。

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Stage05 神様のアシストで一気にビジネスが動く!

「語弊を恐れず言うなら、まさに“神様のアシスト”ともいうべき事態が起こったのです。試作品止まりで量産での採用を決めきれずにいたメーカー各社から相次いで引き合いがきて、次々と受注が決まりました」。2010年の受注額の5倍以上のオーダーが入り、その需要に応じるための量産化プロジェクトが立ち上がる。そしてエアコン、洗濯機、電気自動車、工作機械用リニアモーターなど、多彩な製品に組み込まれる粒界拡散磁石のビジネスが一気に動き始めたのである。「世界最高性能の技術は海を越え、国境を越えて波及し続けています。海外メーカーからの受注もどんどん増えています」。今では国内外にメインプラントを立ち上げ、大口のオーダーに応えられる量産体制となり、事業柱へと育ちつつある。

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Stage05 神様のアシストで一気にビジネスが動く!

「今の我々の役割は、量産における問題点をクリアしながら、より効率的に、より高品質なものを生産するためのアプローチに変わっています。もちろん競合メーカーの追随も始まっていますが、技術の革新性でも量産体制でも、今のところ我々が断トツのトップランナーであることは間違いありません。この位置づけで世界から注目されている間に、グローバルビジネスの基礎固めをしたいと思っています。

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  • Stage06 そして次なる革新チャレンジへ
Stage06 そして次なる革新チャレンジへ

トップランナーの位置づけは、あっという間に変わる!というのが昨今のビジネスの流れである。「今後の課題は、さらにその先を走り続けるためのイノベーションです。実はもう既に革新チャレンジは始まっています。まだまだ実験段階ゆえ詳細は明かせませんが、数年後には新たなインパクトを世界に与えることができると確信しています」。新しい素材の開発は、教科書に載っていない未知の領域に挑むことである。中村と廣田の挑戦も、手探りの状態からのスタートだった。「今回の成功は、勇気をもって挑み、可能な限りの実験をして、そして考え抜いて、出来る限りの議論を尽くした、その帰結としての成果だったのだと思います。ひとつ成功の秘訣を上げるなら、それは自分なりのストーリーを思い描くこと。もちろん最終的には大きく変貌してしまうのが常ですが、まずは強く、ゴールまでの道筋をイメージすることが大切です。そのイメージ喚起力があれば、周囲の人を巻き込んで、大きなムーブメントを起こすことが可能になるはずだから」。

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  • Stage03 遂に報われる日が訪れる!
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  • Stage06 そして次なる革新チャレンジへ
Stage06 そして次なる革新チャレンジへ

思えば、ひとつの現象発見から始まったチャレンジ。そして驚異的な保磁力達成の日を境に、本格的ビジネスへと転じ、それが今やグローバルビジネスとして花開こうとしている。「あの保磁力達成の日に生まれた娘も7歳になりました。娘の成長とともに順調に育ったビジネスですからね。感慨もひとしおです」。ひとつの発見と、その発見を起点に始める飽くなきトライが、世界に誇れるサクセスストーリーを導き出すこともある!これも新素材ビジネスの醍醐味のひとつなのかもしれない。

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