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PROJECT STORY ~挑戦の歴史~

SPECIAL CONTENTS 02

01 シリコーンゲルが巻き起こした化粧品技術革新 シリコーンゲル化剤が拓いた、化粧品の新たな可能性

シリコーンは、いわば“マザーマテリアル”とも言うべき存在で、その優れた特性によって、次々と新たな用途開発の可能性が見つかり、それらを極めることによって、ビッグビジネスへの扉を開く。例えば化粧品用のシリコーンゲル化剤もそのひとつ。ここでは開発のキーパーソン、作田の挑戦の日々を浮き彫りにしながら、素材ビジネスのダイナミズムに迫る。

Stage01 未踏分野への挑戦

デパートの化粧品売場を夫人とともに訪れた作田は、20年に渡る研究開発の日々に想いを馳せていた。「長年の挑戦の成果が、これらの商品に結実していると思うと感慨深いですね。幾度となく、開発断念か?というピンチを乗り越えて具現化したものですからね」。発端は20年以上前。「シリコーンオイルの特徴をフルに活かした化粧品をつくりたい!」という某化粧品メーカーからの開発依頼だった。

  • Stage01 未踏分野への挑戦
  • Stage02 絶対絶命のピンチ
  • Stage03 連日連夜の手作り
  • Stage04 情熱と執念が実を結ぶとき
  • Stage05 ビッグビジネスの創造へ
  • Stage06 ケミカルビジネスの醍醐味
Stage01 未踏分野への挑戦

シリコーンオイルの特徴は、無色無臭で、感触はさらさら。これを化粧品(口紅やスキンクリームなど)に配合すると、撥水性に優れて化粧崩れしにくい、好感触の製品ができ、しかもガス透過性に優れることから、皮膚呼吸も妨げない、そんないいこと尽くめの効果を発揮するのはわかっていた。しかしながら他の材料との相溶性が悪く、配合できるのはわずか0.5%〜2%が限度。当時は、艶やすべりを出す添加剤用途での活用に過ぎなかったという。つまり、誰もが手をつけない未踏領域への挑戦、それが開発のスタートだった。

  • Stage01 未踏分野への挑戦
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  • Stage03 連日連夜の手作り
  • Stage04 情熱と執念が実を結ぶとき
  • Stage05 ビッグビジネスの創造へ
  • Stage06 ケミカルビジネスの醍醐味
Stage02 絶対絶命のピンチ

シリコーンオイルの特徴を十分に発揮させる化粧品をつくるには、もっと配合料を増やす必要がある。そのためにはどうしたらいいか?そこで相溶性の悪さを補うゲル化剤(シリコーン架橋物)ができれば……という発想で、試行錯誤が始まる。シリコーンポリマーをゲル化させるのは比較的簡単で、Si-H基を持つポリマーにアルカリを添加すると、脱水素反応によるSi-OH基が生成、次いでSi-OH基が縮合することによりSi-O-Si結合ができてポリマーが架橋する。

  • Stage01 未踏分野への挑戦
  • Stage02 絶対絶命のピンチ
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  • Stage05 ビッグビジネスの創造へ
  • Stage06 ケミカルビジネスの醍醐味
Stage02 絶対絶命のピンチ

「いろいろ組成を変えて実験し、良い性能を示すサンプルを得ることができました。ここまでは順調でしたが、試作レベルから量産化に移行する段階で大きな壁にぶつかることになります。それはもう、想像を絶するほどの苦難の始まりで、次々と訪れる絶体絶命のピンチを執念で乗り越える毎日が続いていきました」。それでも作田の挑戦魂が萎えることはなかった。前人未到の偉業達成へのアプローチはさらに勢いを増して加速していくことになる。

  • Stage01 未踏分野への挑戦
  • Stage02 絶対絶命のピンチ
  • Stage03 連日連夜の手作り
  • Stage04 情熱と執念が実を結ぶとき
  • Stage05 ビッグビジネスの創造へ
  • Stage06 ケミカルビジネスの醍醐味
Stage03 連日連夜の手作り

どんな装置を使ってゲル化させるか?そしてどうやってアルカリ成分を除去するか?いくつか試したが、結局は水洗いして洗い落とし、それを乾燥させる方法しかなかった。サンプルを評価してもらい、ゲル化剤の採用が決まったものの、量産化の方法が見つからない。100kgのオーダーを得たときは、一度だけ工場の反応基を使って製造試行したが、うまくいかず、結局は実験室のフラスコで手作りするという選択しかなかった。

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  • Stage02 絶対絶命のピンチ
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  • Stage04 情熱と執念が実を結ぶとき
  • Stage05 ビッグビジネスの創造へ
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Stage03 連日連夜の手作り

「10ℓのフラスコへの材料の仕込みは1回あたり4kgなので、計25バッチが必要でした。連日連夜の仕込みとゲル化。続くゲルを手で潰しての水洗い、そして乾燥を繰り返し―、納期に追われながらのまさに“力技”での対応でした(笑)」。なんとかギリギリで納品するものの、次の200kgオーダーのとき、限界に直面する。「これは後日談ですが、上司は半ば諦めていたそうです。でも、ある日上司が感情を爆発させて、タオルを洗面所に叩き付ける光景を見て、私は一念発起。何が何でも乗り越えてみせると」。

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  • Stage06 ケミカルビジネスの醍醐味
Stage04 情熱と執念が実を結ぶとき

ひたすら手作りでの製造を行う一方、量産化の方法も探り続ける。そして付加反応によるゲル化を試してみたところ、水洗い工程が不要となり、量産化への道筋を探り当てる。「多少手間取りましたが、なんとか切り替えの組成も得られ、厚生省の認可もクリアしました。これで楽になると思いきや、すでに市場に出ている商品に配合されている原料を急には変更できず、もう一度だけ、手作りしてほしいとの依頼。その量400kg。納期は3ヶ月後。仕込みは100バッチ。再び実験室で“正”の字を数える、力技の日々が始まりました。でも、この頃には手慣れたもので、難なく納品を果たすことができました」。

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  • Stage04 情熱と執念が実を結ぶとき
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  • Stage06 ケミカルビジネスの醍醐味
Stage04 情熱と執念が実を結ぶとき

振り返れば、開発初期からの合計で約1トンもの量をフラスコで製造したことになる。開発を断念せざるをえない危機的状況にも遭遇したが、最終的には作田の情熱と執念が実を結ぶ。そしてこの闘いの日々が、後々のビッグビジネスへの扉を開く大きなきっかけとなるのである。

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  • Stage05 ビッグビジネスの創造へ
  • Stage06 ケミカルビジネスの醍醐味
Stage05 ビッグビジネスの創造へ

付加反応によるゲル化で量産軌道に乗せることができた後、化粧品メーカーから「ゲル構造の中に親水基を入れたらどんなものになるか?もしかしたら今までにない新感触の化粧品ができるかもしれない」というアイデアをもらい、開発に着手。はじめはゲル化したいのにゲルにならない状況が続き、やっとできたゲルが、なんとも取り扱いがやっかいな代物。「いわば未完成品でしたが、“使い物にならない”状況を理解してもらうためにサンプルを発送。ところが、“面白いエマルジョンができる!”と予想外の評価結果が返ってきました」。

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  • Stage06 ケミカルビジネスの醍醐味
Stage05 ビッグビジネスの創造へ

引き続き開発を続けるが、同じ組成でも試作するたびに性能の違うゲルとなり、再現性が得られない。そんな折、上司の何気ない発言「こんな構造のポリエーテルを使えばいいんじゃない?」が突破口となり、完成への道が開ける。「その後は、サンプルを化粧品メーカーに送っては、直ぐに評価結果が戻り、即座に改良して発送、そして即評価というキャッチボールが続き、一気に完成度を高めていったのです」。

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  • Stage05 ビッグビジネスの創造へ
  • Stage06 ケミカルビジネスの醍醐味
Stage06 ケミカルビジネスの醍醐味

親水基を含むポリエーテル変性ゲルは、その優れた特性が認められ、アメリカの大手ユーザーでも採用。グローバルビジネスの扉を開く。さらには完成した“ゲル化剤”と“乳化剤”をシリコーン以外の油剤に応用できる組成物の開発も進める。「保存安定性の面で多くの問題点が見つかりましたが、もう一切動じることはありませんでしたね。あの苦闘の日々を思えば、ブレークスルーへの道のりは楽でした(笑)」。

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  • Stage06 ケミカルビジネスの醍醐味
Stage06 ケミカルビジネスの醍醐味

その後も化粧品に配合される油剤の新たな可能性を切り拓く組成物を次々と開発。配合率が20%を超えるものも多々あり、今では30品種のラインナップを誇るビジネスにまで成長している。「思えば、新人時代に与えられたテーマを追求し続けた20年余りの歳月は、私にとっては自らの成長の足跡そのもの。ただひたすらに、純粋に、化学の可能性と向き合い続けた日々は、苦労も多かったけれど、幸せな時間だったような気がします」。ある一人の開発者の“仮説と実験と検証の日々”と、幾多の苦難を乗り越え続ける“情熱と執念と誇りの日々”が、ビッグビジネスを創造することもある……作田の例に見る、この事実こそが化学の面白さであり、ケミカルビジネスの醍醐味なのである。

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